厳しい試合を劇的な幕切れで飾った青森山田が2度目のV!“絶対王者”を苦しめた米子北は最後に涙
決勝で2ゴールを奪った青森山田DF5丸山大和(写真=森田将義)
令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)は8月22日に準決勝を行い、米子北(鳥取)と青森山田((青森)が対戦。試合は延長後半終了間際に生まれたDF丸山大和(3年)の逆転ゴールによって、青森山田が2-1で勝利した。
2005年度大会以来2度目の優勝は決して楽ではなかった。準決勝までの5試合で28得点2失点と他を圧倒する勝ち上がりを見せてきた青森山田だったが、黒田剛監督が「さすが色んな所を食ってきたチームだけある。徹底したというか、強かな戦い方はビックリする位の力があった」と振り返った通り、米子北の堅守に苦しみ続けた。
ポイントになったのは、今大会で相手の脅威となっていたMF藤森颯太(3年)とMF田澤夢積(3年)対策。FW名須川真光(3年)とFW渡邊星来(3年)の2ストップをDF鈴木慎之介(3年)とDF飯島巧貴(3年)のCBコンビで、しっかり対応。右のDF原佳太朗(3年)と左のDF海老沼慶士(3年)は中へと絞り切らず、サイドへの守備に専念。サイドハーフの二人で上手く囲い込んで仕事をさせない。クロスを上げられても、MF佐野航大(3年)らが最終ラインまで落ちて、中で合わせるMF松木玖生(3年)を消していく。
狙い通りに青森山田の攻撃を封じると、奪ってからはGK山田陽介(3年)のロングフィードで素早く前線に展開。競り合ったセカンドボールを拾って、二次攻撃に繋げていく。前半10分には左サイドでのスローインからPAに入ったFW福田秀人(3年)が倒されPKを獲得。このチャンスを佐野が落ち着いて決めて、米子北が試合を動かした。
決勝では青森山田を苦しめた米子北のMF10佐野航大
今大会初めて追いかける展開を強いられた青森山田は、以降も自陣でのボール回しから引き出すサイドアタックとチームの代名詞であるセットプレーから得点チャンスを伺ったが、「後ろの人数はずっと変わらなかったし、サイドの所もチャレンジ&カバーで必ず対応してきていた」(黒田監督)米子北の守りを崩しきれない。
後半も米子北にとっては我慢の展開が続いたが、鈴木が「耐えるんじゃねぇ。点を獲りに行くぞ」と激を飛ばした通り、カウンターから2点目を奪いに行く姿勢も忘れない。後半26分には佐野が中盤でクリアボールを拾ってミドルシュート。このボールがPAのFW片山颯人(3年)に渡って振り向きざまにシュートを放ったが、枠を捉えることができない。
米子北がこのまま逃げ切るかと思われたが、34分には青森山田に念願だった歓喜の瞬間が訪れた。左サイドの高い位置でスローインを奪うと、これまでのロングスローではなくクイックスタートを選択。「ロングスローばかりを警戒して、ボールを見れていなかった」(鈴木)という米子北の守備陣を欺き、MF小原由敬(3年)が上げたクロスを丸山がヘディングで合わせて、同点に追いついた。
迎えた10分ハーフの延長戦では両者見せ場を作りながらも均衡は崩れなかったが、PK戦が間近に迫った延長後半10+1分に試合が動いた。土壇場で獲得した左CKを藤森がゴール前に送ると、反応したのは丸山。「あの時間帯でゴールが決まれば勝ちが決まる。自分が得意なコーナーなので足が取れてでも決めてやろうという気持ちで入った」と振り返る一撃がゴールネットに突き刺さると、直後に青森山田の優勝を告げる笛が鳴り響いた。
試合後のインタビューで黒田監督は、「そう簡単には優勝できないと思っていました。後半のロスタイムと劇的な終わり方でしたが、結果的に優勝という形で終われて感無量です」とコメント。「最後まで諦めず何が何でもPKに持ち込ませないぞという彼らの気迫が、最後の最後で勝った。時間ギリギリの所でやられて終わる試合が昔から多かったけど、最後まで獲りきって終わる姿に逞しくなった印象もある。今日色々と学習したことを夏以降の強化に繋げていきたい」と最後まで逞しく戦い続けた選手たちを称えた。
(文・写真=森田将義)
▽令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)