「オール3年生軍団」今治東、初の四国王者戴冠!

前半10分・今治東MF7高須賀 陽斗(3年)が先制点を決める(写真=寺下友徳)

 コロナウイルス感染拡大防止のため、関係者・チームエントリー外の入場を禁ずる完全無観客で開催された「四国高等学校サッカー大会」。今回で男子は第70回目の節目、女子は第9回となる大会は6月19日(土)~21日(月)に高知県高知市の高知県立春野運動公園内で開催された。

 そんな大会のフィナーレを飾る男子決勝戦は6月21日(月)11時に球技場でキックオフ。カードは高知中央(高知県1位)を3-1、徳島市立(徳島県1位)を3-0で撃破した今治東中等教育学校(以下、今治東)と、新田(愛媛県1位)をスコアレス後のPK戦5-4、高知西(高知県2位)を2-1で下した徳島商との県2位校対決である。

 両校のスターティングシステムは今治東は県大会同様の「4-3-3」システム。GKは1藤原 陸。4バックは右から3山本 唯人、5大森 翔貴、キャプテンの4石山 瑛に2矢野 滉汰。中盤はアンカーに13中本 康貴を置き、その前に14白川 虎太郎と8市川 栞安。スリートップは右から11三好 憂、7髙須賀 陽斗、10十亀 良幸。ベンチ入り含む17人は全て3年生となっている。

 対する徳島商は「4-2-3-1」。GKは17登 大也(2年)、4バックは右か5河野 修斗(3年)、4森 輝紀(2年)、キャプテンの3増田 太陽(3年)、2湯浅 成翔(2年)。中盤はダブルボランチが7吉岡 直人と8大坪 永遠の2年生コンビ。サイドアタッカーは右が6作本 幸之助(3年)、左が13富士村 優(1年)。セカンドトップが10小山 優貴(2年)、トップに11守岡 樹希也(3年)という大会初戦の新田戦から2名を入れ替える布陣で挑んだ。

 元・J2愛媛FC&J3カマタマーレ讃岐監督を歴任した望月 一仁JFA地域統括ユースダイレクター四国地区担当や、前・J2愛媛FC監督の和泉 茂徳・高知県サッカー協会テクニカルコーディネーターも見守る中始まった試合は、開始10分でいきなり動きを見せた。

 自陣やや左サイドでボールを受けた今治東FW十亀は得意のドリブルで30メートルほど前進し相手を引き付けながらペナルティーエリア中央に入り込んでいたFW髙須賀へパス。そして髙須賀は相手DFに囲まれながらも冷静にシュートコースを探し、グラウンダーで右足シュートをゴール左隅へ流し込んだ。

四国高校サッカー大会決勝戦を制し初優勝を飾った今治東(写真=寺下友徳)

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 こうして地元J3クラブ・FC今治が地域サッカーコニュニティーに伝承しているサッカーの原理原則「岡田メソッド」のフィロソフィーを随所に使った先制点で主導権を握った今治東は、その後も「自分は本来攻撃的な選手ですが、県大会決勝戦では守備に回る場面が多かったので、そこを意識した」MF白川らが攻守に出色の動きを見せて前半35分の多くを徳島商陣内で展開した。

 ただ、徳島商も後半に入ると両ワイドの作本、富士村の位置をより高く保ちつつ、効果的なハイプレスで応酬。後半10分にはカウンターからMF吉岡がGKと1対1、続く後半18分にはFW守岡がフリーでシュートを放つなど、今治東のゴールを脅かした。

 一方、今治東はこの時間帯を耐えると給水タイムの間にシステムを「4-4-2」へと変更。中央を締めて「ビルドアップに課題が見えた」(小西 健太監督)徳島商の攻勢を封じ、最後はアディショナルタイムにFW十亀がドリブルから見事なミドルシュートを突き刺し2-0。今治東が初の四国大会ファイナル進出で初優勝を成し遂げた。

 試合後、歓喜があふれるピッチ上、中には涙を流す選手たちもいる中、今治東・谷 謙吾監督はこう静かに話した。

 「この大会はオール3年生で行くことは初めから決めていました。この中の何人かはこの大会で引退しますが、今大会での成功体験は四国プリンスや選手権を考えると大きかったと思います。やはり選手たちはゲームの中で成長するものですね」

 道は分かれても心は1つ。今治東はインターハイを逃した悔しさも、四国大会初戴冠の喜びもそれぞれの糧として、夏・そして勝負の秋・冬へと力強く踏み出していく。

(文・写真=寺下友徳)

▽令和3年度四国高等学校サッカー選手権大会
令和3年度四国高等学校サッカー選手権大会