石川県から北の大地にやってきた努力家ルーキーMF多賀の一発で、初出場クラーク国際が札幌山の手を下し、札幌地区代表決定戦進出!
札幌山の手 vs クラーク記念国際
ずば抜けた技術はない。スピードもまだ平均ぐらい。しかし誰よりも真正面からトレーニングに向き合い、長い距離を黙々と走る。そんな〝努力の天才〟 MF多賀士恩(1年)が、クラーク国際に金星をもたらした。
8月29日、全国高校サッカー選手権札幌地区予選2回戦が札幌工業高校グラウンドほかで行われ、大会初出場のクラーク国際が1-0で北海道大会3年連続出場中の実力校・札幌山の手を下し、9月4日の北海道大会代表決定戦に駒を進めた。
前半29分、左サイドのMF中村修斗(2年)がボールを持つと、右サイドのMF多賀がゴール前に走った。『僕が(中村のボールの)ターゲットになって、落としたボールを誰かが決めてくれればいい』。思った通りの中央へのボールが中村から飛んできたが、そのボールはまず相手DFに当たり、ルーズに跳ね上がった。そして多賀の体の右前方に落ちてきた。後ろに落とすよりも、ゴール方向に蹴る方が明らかに自然。 DF のブロックを受けながら右足を合わせると、ボールはポーンと跳ね上がり、ゴールに吸い込まれた。「足を伸ばしたら入っただけです」。虎の子の1点を挙げたヒーローは、どこまでも謙虚に、値千金の決勝ゴールを振り返った。
200段以上の階段を何度も往復するモエレ山登りなど、走るトレーニングでは、常に先頭集団をキープする。初速が速いわけでも、最後に伸びてくるわけでもないが、常に同じスピードで淡々と走り続け、ゴール時には必ずチームで3番目までの位置にいる。実戦形式の練習では、伊藤壇監督の指示を忠実に守って動くことを心がける。コンサドーレ東雁来グラウンドでの2時間の全体練習のほか、登校前の時間には必ず体幹トレーニングで汗を流す。「地元(石川県)も含めて4 、5チームの体験練習会に行きましたが、クラークのトレーニングが一番面白くて、絶対にうまくなれると思って、すぐに『ここに来たい』と、両親にお願いしました。だから何があっても、最後まで頑張らないと」という。
札幌山の手 vs クラーク記念国際
今年4月の入学から3か月は同学年の選手がスタメンに名を連ねる中、出番は終盤に限定された。それでも腐らず、同じスタンスでトレーニングに取り組むと、 86Kgだった体重が 78Kgまでダウンし、少しずつスピードが上がってきた。「入学した時、先輩たちのプレーが上手過ぎるので、僕は当分何もできないと思った」というが、約5ヶ月、毎日その先輩たちのプレーを観察し、愚直に真似し続けることで、技術も向上。1回戦は右サイドバック、 2回戦は右サイドハーフと、2戦連続のスタメン器用に、最高の結果で応えた。「どの位置でも、どの時間帯でも期待通りに動いてくれるので、非常に使いやすい選手。頑張れば、必ずサッカーの神様が力と運を与えてくれる。それを今日、証明してくれた」と指揮官はうれしそうに、多賀を絶賛した。
努力家ルーキーの右足から生まれた虎の子の1点を守り、大会初出場のクラーク国際が北海道大会進出へあと1勝まで迫った。「次も自分のできることを、全力で頑張ります。3年生と1試合でも多くプレーしたいですから」と多賀。北海道大会代表決定戦となる次戦・北海道科学大学高戦も、地道な努力で身につけた力強く、確かなプレーで、チームを次のステージへと誘う。