クラーク記念国際札幌大通キャンパス伊藤壇監督

 “躍動感のあるサッカー”で全国へ-。アジアの22の国と地域でプレーした伊藤壇監督(45)が、故郷・札幌のクラーク記念国際高校・札幌大通キャンパスで指導を開始して6月で1年が過ぎた。当初わずか3人だった部員は、新入生・転入生を迎えて20人ほどに増加。''アジアの渡り鳥''と呼ばれた男のこの1年の苦闘と、未来図をうかがった。

ーーチームが発足した昨年度を振り返っていただけますでしょうか?

 昨年6月に3人でスタートして、年末にようやく7人になりました。しかし、大会に出られる人数が揃いませんでしたし、(新型コロナウイルス感染拡大の影響で)フットサルの大会もすべて中止になりましたので、「選手のモチベーションを落とさないこと」「徹底的に基礎の部分を叩き込むこと」の2つを重点的に取り組みました。

 年度末の今年3月に、元北海道コンサドーレ札幌の河合竜二さん(現コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン=CRC)率いるコンサドーレスタッフとフットサルのトレーニングマッチをしましたが「昨年の夏と比べてメチャクチャ強くなりましたね。正直ビックリしました」と、感想をいただきました。そこで初めて手応えを感じました。

ーー冬場の体づくりはどんなことに取り組んだのでしょうか?

 同じことをひたすらやってもらうと、集中が続かず、飽きも来ますので、キックボクシング、雪中サッカー、冬山登山、スケート、歩くスキーなどもトレーニングに取り入れました。サッカーとは関係ないように思えるかもしれませんが、私はアイスホッケーで育っています。無意味なことは何ひとつありません。実際に、体つきが大きく変わった選手もいます。

ーー4月に1年生が入学してようやくチームとしてのスタートが切れたという感じでしょうか?

 ひと冬を越えたら上級生のレベルがグッと上がりチームの雰囲気も良くなってきたので「1年生が合流したら、良いスタートが切れるかも」という思いはありました。しかし、新型コロナの影響で1年生の合流が大幅に遅れてしまい、合宿や練習試合もほとんどできませんでした。

 入学式の1週間後にリーグ戦の初戦があって、2週間後には春季大会、その3週間後にはインターハイの札幌地区予選でした。チームを作る時間どころか、選手の適性ポジションもわからないまま、本番を迎えたという部分は大変でした。

練習中に指示を出す伊藤監督

ーー現在、選手権に向けて取り組んでいることはどういったことでしょうか?

 1年生に関して言うと、まだまだ技術的に未熟な選手も多いですので、まずは基礎。「止めて、蹴る」「ヘディング」など、強豪校の1年生なら当たり前にできるプレーに時間を費やしています。コーナーキックをヘディングで合わせる時に、どちらの足で踏み切るのか、分からない選手もいます。そういう基礎を飛び越して次のステップには行けません。

 幸い、今の2、3年生は人数が少ない時に基礎をしっかりとやってきましたので、完璧ではないですけれど、頭の中ではわかっています。ですから、基礎練習では、1年生が必ず先輩とパートナーを組むように指示しています。インターハイではなんとか「1勝」という最低限のノルマを果たせましたので、選手権ではさらに上、「北海道大会出場(=札幌地区予選突破)」を目標にしています。

ーー手応えはいかがでしょうか?

 リーグ戦は3連勝で前半の7試合を終えることができました。8月の苫小牧フェスティバル、札幌サマーカップでも、北海道大会常連のチームに勝ったり負けたりと、互角に戦えた部分がありました。春先と比べて、全員がハードワークできるようになってきています。選手権予選は相手も必死になりますから、リーグ戦やフェスティバルと同じような結果が出るとは限りませんが、春よりは数段良い試合ができるかなと思っています。

ーー1年目からプロに挑戦する選手がいると聞きましたが?

 (挑戦先の)クラブでどう評価されるかは本人次第ですが、高校時代に一定レベルの実力を身につけ、「やはりプロに挑戦したい」という選手には、チャレンジの場を作ってあげるのも、長くプロサッカー選手としてプレーした私の仕事です。

 ハードルは高いですが、いつか(提携する)コンサドーレにも選手を送り出したいですね。今トレーニングしているグラウンドは、コンサドーレ札幌U-18と同じですし、クラブハウスの窓から、練習の様子を見てくれているコンサドーレのスタッフもいます。プロクラブでは当たり前ですが、GPSを使ったパフォーマンスの計測も常時行い、効率的かつ効果的に身体能力を高めるなど、プロサッカー選手になるための最高の環境が整っています。

 唯一弱点があるとすればリーグ戦です。今年が参加初年度で札幌地区4部のスタートですから、(北海道内最高峰の)プリンスリーグで戦えるのは早くても2025年。それまでは、強いチームの出場するフェスティバルに積極的に参加したり、トレーニングマッチを組んでいただいたりしながら、実力を高めていきたいと思っています。

ーーーー来年以降のチーム構想としてはどんなことを考えていらっしゃいますでしょうか?

 チームとしては、発足当初から目標の''躍動感のあるサッカー''を現実のものに近づけていきたいですね。味方がボールを奪ったら、選手が中盤からどんどん前線に飛び出して行くような、タテに速いサッカーが理想です。選手としては、技術的には粗削りでも、スピードだけは誰にも負けないとか、フィジカルがあって、1対1がとにかく強いとか、特徴のあるプレーヤーに集まってほしい。1大会で1個ずつ目標をクリアして、2023年度の北海道インターハイには必ず出場できるよう、チームをしっかり仕上げていきたいと思っています。