熊本商が同点ゴール(写真=井芹貴志)
8分、24分の稲田翼のシュートは熊本商GK内野隆大に阻まれたほか、11分の山下、14分の碇明日麻のヘッド、22分の兼松のシュートも枠外と、決定機を作りながらも得点に結べていなかった大津。しかし24分、右コーナーからの流れを作り直し、古川大地が送ったクロスを吉本篤史がファーで合わせてゴール右隅に決め、先制に成功。熊本商も前半終了間際に左サイドバック木實琉斗のクロスに矢嶋飛羽が飛び込むが合わず、大津の1点リードで前半を折り返した。
「もともと怖がらずにラインを下げないことが前提だったが、押し込まれる展開になってトップの高浜(航大)が降りてきてしまい、そこを追い越しても相手のDFに捕まる状況だったので、後半は高浜をDFラインまで張らせて、そこを起点に追い越していくことを伝えた」と時田監督が話すように、後半に入るとDFラインを押し上げた熊本商が高い位置でボールを引っ掛けて攻め込む場面が増えていく。47分、右から抜けた吉井孝男が切り替えして送ったクロスは合わなかったが、50分、左からのクロスがゴール前に入り、その競り合いからのこぼれに反応した鳥飼颯真が倒れ込みながら右足を合わせて同点とする。
追いつかれた大津は、山下に替えて中村健之介、さらに古川から舛井悠悟、嶋本から日置陽人と交代カードを切って点を取りにいくが、熊本商も前半同様に固い守備で跳ね返し、69分には吉井がボックス外から狙ったミドルがクロスバーを叩くなど、お互いが意地を見せる一進一退の攻防が続く。大津 vs 熊本商(写真=井芹貴志)
80分を回って表示されたアディショナルタイムは5分。大津が攻め込みつつもゴールを割れず、このまま延長戦に入るかと思われた40+5分、大津はコーナーの流れからPKを獲得。これをキャプテンの碇が冷静に決めて勝ち越し、と同時に宮原一也主審の笛が鳴り、劇的な幕切れとなった。
ギリギリまで大津を追い詰め、自身が主将として全国出場した時以来の選手権まであと1歩に迫った熊本商の時田監督は、「1つ1つのプレーの強さ、質を求めてきて、最後はさらに高い基準を突きつけられたが、選手たちは本当によくやってくれた。謙虚さとともに、伝えたことを吸収する力を持ってくれている子どもたちと、これまで時間をかけて積み上げてきたことを具体的に表現できたことには胸を張りたい」と話す。また、準決勝に続き競り合いのジャンプを繰り返したことで後半途中に足を攣って交代したキャプテンのDF木實大翔は、最後の瞬間にピッチに立てていなかったことを悔やむが、「3年間、時田監督に言われてきた『徹底する』ということを信じてやってきたことは間違っていなかったと思う」と振り返り、この悔しさを糧に大学へ進んでプロを目指すという。
▽第102回全国高校サッカー選手権熊本予選
第102回全国高校サッカー選手権熊本予選