0-0で80分を終え、延長戦にもつれ込んだのだが、持久戦は大宮南にとってはお手のものだ。

 川越南との1回戦は0-0から延長後半に4得点し、浦和北との2回戦でも0-0から延長後半に2点を奪った。5人で計6ゴール。どこからでも取れる強みも持ち合わせていたのだが……。

 延長前半はともに無得点。もうすぐPK戦突入かという後半8分、浦和学院が決勝点を挙げた。

 橋本が左からロングスロー。FW宮本翔(3年)を経由し、遠いポストにいた身長165センチのCB御武内龍吾(3年)が、ヘディングで191センチのGK磯野志政(3年)の脇を破った。

 ヒーローは「PK戦も頭をよぎる難しい試合だったので、決まった瞬間はもううれしくて仕方なかった。準々決勝も全員の力を合わせて勝ち切りたい」と力こぶを入れた。

 今春、コーチから指揮官に就任した川上耕平監督も激闘を制し、安堵と喜びの表情が入れ交っていた。「リーグ戦でも対戦し、手の内を研究されているのでやりにくかったですね。攻撃は消極的で自分たちらしくなかったし、天然芝にも慣れていなかった」と述べ、この言葉からも苦しい1戦だったことがうかがえる。

 次は武南との戦いだが、川上監督は「ボールを動かしながら攻めるという、これまで積み上げてきたものを出したい」と総体予選に続く準決勝進出に思いをはせた。ロングスローと縦への突破で脅威になった橋本は、「今日は流れを変えることを心掛けたが、次はゴールで勝利に貢献したい」と意気込んだ。

 わずかな差で8年ぶりのベスト8を逃した大宮南の田中龍太郎監督は、「守りは良かったが、点の取り方に少し工夫が足りなかったですね」と敗因のひとつを挙げ、短い言葉の中に悔しさをにじませた。

 

(文・写真=河野正)

▽第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選
第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選