奈良育英イレブン
互いの手の内を知り尽くした両校だけに、どちらが立ち上がりに主導権を奪うかに注目が集まる中、先手を奪ったのは奈良育英だった。準決勝の一条戦では序盤の入りが悪く、早い時間に失点。ゲームメーカーのMF有友瑠(3年)が「このままだと絶対決勝で負けてしまうと監督からも言われた。もう一度気を引き締めてやろうと、練習から強度を高くしてきたので、それが今日の出来につながったと思う」と語る通り、試合開始直後から持ち前のハイプレスを発揮。前線でボールを奪ってからのショートカウンターで、何度も相手ゴールに迫っていった。
立ち上がりから攻勢に出た奈良育英が、ついに均衡を破ったのは前半14分。何度もゴールに迫りながらも決定的なシーンを作れずにいた中で、ペナルティエリア外でボールを受けたMF西村優士(2年)が思い切りのいいミドルシュートを沈めて先制点を奪った。奈良育英・梶村卓監督が「あの時間にとれたのは凄く大きかった」と語る値千金のゴールで、“夏の悪夢”を払拭した。こうなると試合は奈良育英ペースに。エース藤川陽太(3年)らが両サイド裏のスペースに走り込み、何度も生駒ゴールを脅かすが、生駒も守護神・石丸裕基(3年)やDFリーダーの久保田蒼大(3年)らを中心に粘り強く対応する。
次の得点シーンが生まれたのは前半終了間際の37分。右サイドでボールを受けた有友が、切り返してから得意の左足でシュートを狙う。石丸が弾いたところを、藤川が見逃さず、冷静にゴールに流し込んだ。「有友は左足のシュートがあるので、キーパーがこぼすかもと思って狙っていました」と藤川が自賛するストライカーらしいゴールで、奈良育英が追加点をあげた。勢いにのった奈良育英は直後の40分、今度は藤川の右サイドの突破から、折り返しをMF森嶋大琥(2年)が右足で合わせて3点目のゴール。梶村監督が攻撃のキーマンにあげる2人のアタッカーのゴールで試合の流れを決定づけた。
▽第103回全国高校サッカー選手権奈良予選
第103回全国高校サッカー選手権奈良予選