「最後まで全員でやり切れた」という鈴木監督の言葉通り、この勝利は文字通り全員で勝ち取ったものだった。木村が語るように、日々のキーパーチーム全体での切磋琢磨が、この歓喜の瞬間を生み出した。しかし、立ち止まっている暇はない。次なる相手は格上の湘南工科大附。キャプテンの柳田は「ゴールに向かうところをもっと増やしていきたい」と課題を挙げ、木村も攻撃面での決定力向上を誓う。監督は次戦に向けて「最大のリスペクトを持ってチャレンジさせてもらう」と謙虚さを見せ、選手たちも「僕たちはチャレンジャー」と闘志を燃やす。3年間積み重ねてきたものを武器に相手にも隙があると信じ、そこに全てを賭ける覚悟だ。

 この日の劇的な勝利で得た「信じる力」を胸に、市立幸の選手権の旅は、さらに熱いドラマを求めて続いていく。PK戦で決着した試合だったが、そこにあったのは運ではなく、日々積み重ねた信頼という名の絆だった。

     

(文・写真=西山和広)

▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選