DF中本智貴主将(刀根山)

 冬の全国の舞台をかけた第98回全国高校サッカー選手権大阪予選の3回戦、刀根山夕陽丘。スコアレスで迎えた後半アディショナルタイム、チームの誰よりも強い気持ちで今大会に臨んだであろうDF中本智貴主将がヘディング弾を突き刺し刀根山を4回戦へと導いた。

 「去年の選手権で最後に自分がPKを与えてチームが負けてしまった。そこから今日までずっとそのことを考えてやってきた」そう語る中本。奇しくもちょうど1年前のこの日、刀根山は選手権予選3回戦で清風に2-3で敗れ涙を呑んだ。決勝点となったのは、先輩の主将が交わされたのを中本が最後に身体を張って取られたPKによるものだった。

 一時は「中本は十字架を背負っている・・・。背負わせすぎてもいけない」という指揮官の親心もあり、中本をキャプテンから外していたという。しかし、最後は「キャプテンをまたやりたい」という中本の願い出により、再びキャプテンマークが1年生の時からレギュラーとして試合に出ていた彼の元に返ってきた。

 斯くして、再びキャプテンマークを巻くこととなった中本に運命の9月8日が訪れる。この日も1年前と変わらず接戦に。そして、スコアレスのまま、PK戦に突入すると思われた後半アディショナルタイムにドラマが待っていた。ハーフウェイライン付近で得たフリーキックを高い打点で中本が突き刺す。「良い所にボールが来たので決めるだけだった」という言葉通り、ドンピシャヘッドが見事に決まり、タイムアップ。「アイツのことを信じているんで」という指揮官の言葉に見事に劇的ヘッド弾で応えてみせた中本は「耐える時間が長かったが、全員で耐えられた。次の試合も自信を持ってやっていきたい」と安堵の笑み。

 去年突破できなかった3回戦の壁を、そしてあの日の呪縛を自らの手で打ち破った中本はチームのスローガンである『常昇・常勝・常笑』を合言葉に、かけがえのない仲間と共に最後の選手権を駆け抜ける。

 「今」を大切に、NO.1を目指す。

(取材・文・写真=甲斐雅人)