強烈なリーダーシップを発揮した星稜DF中村実月(写真=松尾祐希)

 身体を張った守備と仲間を鼓舞する声。キャプテンらしい強烈なリーダーシップを発揮し、その集中力は最後まで途切れなかった。

 8月19日に行われた全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会の準々決勝では終盤に岡山学芸館(岡山)に猛攻を浴びせられたが、最小失点に抑えて2-1で勝利を手にした。

 鈴木大輔(千葉)らを擁して準優勝を果たした2007年度以来となるベスト4進出を決めた星稜(石川)。その中心にいたのが、CBの中村実月(3年)だ。

 チームはロングスローからオウンゴールを誘発して前半の終盤に先制点を奪うと、後半27分に前田一勇(3年)が追加点を奪う。残された時間はアディショナルタイムを含めて10分強。ここから相手に反撃されたが、中村が身体を張った守備で存在感を示した。

 空中戦の強さを武器にクロスボールやロングボールを跳ね返すと、地上戦でも粘り強い対応で相手に突破を許さない。35分に岡山学芸館のMF山岡亮太(3年)に1点を返されたが、以降も下を向かずにチームメイトへポジティブな声を掛け続ける。キャプテンに相応しい立ち振る舞いを見せ、8月上旬に活動再開したばかりのチームを勝利に導いた。

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 中村は鳥栖U-15出身。U-18への昇格が見送られた際、自ら星稜への進学を希望したという。その理由を本人はこう話す。

 「小学校の時に本田圭佑選手の本を読んで、星稜の存在を知りました。そこからずっと星稜に行きたいと思っていたんです。ユース昇格が保留となり、どうなるかわからない中で最終的に昇格できず、そのタイミングで進学先を考えた時に星稜に行きたいと思った。ここで優勝したいと思って選択したんです」。

 進路が決まっていなかった中学時代のチームメイト・CB井上陽向大(3年)にも声を掛け、憧れの星稜へ入学。そこから経験を積み、最終学年を迎えた今年は全国舞台で最高の夏を謳歌している。

 目標は日本一。そのためには倒さなければいけない相手がいる。それが青森山田だ。中学最後の大会となったU-15高円宮杯の1回戦で青森山田中に1-4で敗北。自身はベンチからその様子を見守ったが、その悔しさは今も忘れていない。

 「青森山田に勝ちたいという想いは強い。青森山田が特集されている動画は全部見ているぐらい。中学時代に負けた悔しさはあるので、鳥栖時代の仲間達の想いも背負って借りを返したい」。

 青森山田と対戦できるのは決勝の舞台。もう1度リベンジを果たすためにも、21日に行われる米子北との準決勝は負けられない。かつての仲間の想いを背負う星稜の大黒柱は誰よりも強い想いで、セミファイナルのピッチに立つ。

(文・写真=松尾祐希)

▽令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
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