前半4分、先制点を挙げ、高々と左手を上げるクラーク国際のFW若宮

 2-3と1点ビハインドで迎えた後半ロスタイム。カウンターから北海道科学大高にとどめの1点を奪われ、初出場クラーク国際のファーストチャレンジが終わった。決定的な4失点目の合図に続けて試合終了のホイッスルが吹かれると、80分間を交代なしで戦いきった11人全員が、その場に崩れ落ちた。

 9月4日、全国高校サッカー選手権札幌地区予選3回戦が札幌・白旗山競技場で行われ、大会初出場のクラーク国際は2-4で、北海道大会ベスト8の実績がある実力校・北海道科学大高に敗れ、初の北海道大会出場は来年以降に持ち越された。

 前半4分、先制したのはクラーク国際だった。ペナルティエリア手前でボールを持ったFW若宮寛汰郎(1年)が振り向きざまに右足を一閃すると、弾丸ライナーがゴール右に突き刺ささった。「狙ってはいませんでしたが、思い切り打ったら入りました。うれしかった」と若宮。ルーキーストライカーの一発で、2戦連続の番狂わせのムードも漂った。

 痛かったのは、1-1の前半ロスタイムに与えた PK だった。あと1プレーで前半終了というところでディフェンスがペナルティエリア内に入った相手選手を深追いして倒してしまった。 PKでは、GK坂本悠輔(1年)が反応するも、ボールは無情にもゴールへ。勝ち越し点を許した直後に、折り返しのホイッスルが鳴った。 2 回戦までの累積警告で主将の MF 山口啓太(3年)が出場停止、 2回戦の試合中に脳震とうで倒れたDF木村海斗(同)は、ドクターストップがかかっていた。交代要員は、怪我からの復帰を目指してリハビリ中の1年生1人という苦しい台所事情のクラーク国際には、重た過ぎる1点となった。

試合終了後、悔しそうに頭を下げるクラークの選手たち

 2点差とされた後半途中から、伊藤壇監督(45)はボランチでスタメン起用した MF 髙道勇壮(2年)をトップ下、センターバックで先発したMF中村修斗(2年)をボランチと、攻撃力の高い2人を上げて勝負に出る。後半 38 分、右サイドを駆け上がったMF髙道のグラウンダーのクロスをMF中村が左足で合わせて1点差としたが、そこまでだった。11人全員が80分フル出場というギリギリのクラーク国際に、最後の相手カウンターを追う余力はなかった。「最初の1点を守りきるという選択肢はあったかもしれない。ただ選手たちは最後まで攻め、チームが3人で始まったころに僕が掲げた〝躍動感のあるサッカー〟をしっかりやり通してくれた。負けたのは悔しいけれど、この悔しさも来年の力になる。必ずリベンジします」と伊藤監督は静かに言った。今大会3試合の7点で、ゴールしたのは6人。ピッチの全員が走り続け、どこからでも得点できるコンサドーレを彷彿とさせる攻撃力は、ライバル校の脅威となった。

 昨年6月10日、コンサドーレ東雁来グラウンドでの最初のトレーニングに集まった選手はわずか3人だった。コンサドーレから派遣された伊藤監督、横山知伸フィジカルコーチ、今岡亮介GK コーチの3人が1人ずつ指導できる人数。日替わりのグラウンドで、日が落ちるまで伊藤監督の上げる回転のかかった強いクロスをヘディングし続けた。この日、キャプテンマークを巻いた副将の DF 荒澤祥太郎(3年)は、9km ほどのランニング途中で何度も吐きそうになりながら、「大丈夫」とつぶやきながら走り抜いたことがあった。当時は単独チームで練習試合をすることすら〝夢〟だった。「苦しい時もあったけど、サッカー部に入ってよかった。今年の4月に、1年生が入ってきて、試合ができるようになって、本当に楽しかった。前よりももっと、サッカーが好きになった。高校生活で最高の思い出ができた」。その目には、悔しさと充実感の入り混じった涙が浮かんでいた。