試合終了を迎えた大阪星光学院イレブン
その中で「僕が声を出さなくなったら終わりだと思っていた」と森はチームを鼓舞し続けた。
雨で水が溜まり、ボールが止まってしまうグラウンド状況には「全く予想していなかった」という森だが、「僕らの試合は何故か雨が多くて、今日よりひどい状況はいっぱいあったので、雨の中での戦いは慣れていてそこはうちに有利だったと思います」とかえって好都合だったと話す。
負ければ引退。押し込まれていてもその意識が選手たちの背中を押した。
しかし善戦しながらも最後まで相手ゴールを割る事は出来ずに敗戦。リーグ戦を2試合残すものの、この結果で3年生は5月に引退することが決まった。
「本来だとこの大会で引退なんですが、コロナの影響でリーグ戦が5月4日まで延びたのでそこまではやれることになりました。でもこの大会への思いはもちろんありましたし、ピッチの中では"最後までやろう!"と思っていたんですが、試合が終わってピッチを出た瞬間に、"今までここをこうしていたら"とか、いろいろ溜まっていたものが出てしまった」とキャプテンは試合後に涙を流した。
「僕らは中高一貫なので、中学の時も1年間やらせてもらった」と中学の時もキャプテンを務めた森は「高校に入って新しいチームになっても慣れていたので難しいことはなかったんですが、自分たちの弱点である守備に対しても上手く練習に反映できなくて、その分長所である攻撃の部分は伸ばせたと思います」
「個人の力で点を取れて勝てることもあったんですが、最後の最後まで連携の部分が課題としてあった」と森には最後までやり切った充実感と、連携面などのやり切れなかった悔しさの両方が残った。
最後に森は「グラウンドの大きさの関係もあって、練習の日数も他の高校と比べて少なかったのもあるし、学校自体が勉強を最優先にしているので、成績が悪くて誰かが来れないという事も結構あった」と思うように出来なかった事も多かったと話したが、「みんなが凄い信頼してついてきてくれたので、充実した高校サッカー生活でした」とここまでを振り返った。
決して恵まれた環境ではなかったかもしれないが、色々な葛藤と戦いながらここまでキャプテンを務めあげた森。
そして対戦した山田の高橋監督に「非常に苦労した」と言わせた大阪星光学院イレブンの戦いぶりは実に見事だった。
(文・写真=会田健司)