「ボランチがキーになる」と野口は言う。ビルドアップの起点として、攻撃の舵取りとして、そしてカウンターの第一の壁として。彼が担うのは、華やかなゴールシーンの影で、試合を設計する静かな仕事だ。「押し込んでいる分、カウンターの目を積むのがボランチ。周りを見ながら気配って、切り替えの部分は今日誰よりも意識した」。その言葉通り、彼のプレーには迷いがなかった。ゲームを読み、スペースを消し、そして流れを創る。それは、技術以上に「思考の強度」が問われる領域だ。

 関東大会ベスト8。インターハイベスト8。市立橘、桐光学園という壁の前に、二度も膝を屈した夏。その悔しさを、野口は隠さない。

【次のページ】 「こんなんじゃ終われない」 MF野口慶人が語る、日大藤沢の静かなる覚悟(3)

▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選