野口の視線は、すでに先を見ている。神奈川を勝ち抜き、全国の舞台で戦うために。そして、彼らが新チーム発足時から掲げてきた「日本一」という目標を、現実のものにするために。

「日本一っていう目標は絶対ブレてない。まずこの神奈川県予選を突破して、頂点を目指してこの山をみんなで登っていく」

 野口の瞳に映るのは、もう目の前の試合ではない。彼が見ているのは、冬の国立競技場の芝生であり、その先にある栄光だ。そこへ至る道のりは険しい。だが、悔しさを糧に変え、焦りを捨て、自分たちのサッカーを貫く。そんな成熟を手に入れた日大藤沢には、その資格がある。

 野口慶人という司令塔が描く青写真は、すでに完成している。あとは、その絵を現実に変えるだけだ。静かな覚悟を胸に、彼らは次の山へと歩み始める。

(文・写真=西山和広)

▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選