毎年プロ選手を輩出しながら全国大会とは無縁だった“育成の興國”がチームとして勝負強さを身に着け遂に大阪の頂点にたどり着いた。プリンスリーグ関西に初参戦した今年、関西の強豪を相手に得点を量産し攻撃が通用することは証明していた。しかし同時に4月の阪南大高戦では5失点、7月の京都橘戦では6失点と失点数もリーグワースト2位。勝つ為には失点数を減らす必要があった。「“アトレチコディフェンス“を合言葉に練習から守備時の献身性を意識付けた」(興國・内野監督)と話す通りこの選手権では5試合戦ってわずか2失点。後ろからショートパスを繋いで組み立てるスタイルによくみられる、ひっかけられてカウンターを受ける場面でも「マリノスの練習に参加して切り替えの早さが全然違ったのでそこは意識している」(興國・10番MF樺山諒乃介)の言葉通り攻から守への切り替えが早く相手の攻撃に慌てずに対応できていた。GK田川と両CBの中島と平井の急成長もあり守備が飛躍的に安定し失点数を減らすことに成功した。

そして忘れてはいけないのが、スタメン11人中7人が2年生というチームにおいての3年生の存在だ。「腐るやつが一人もいなかった」(興國・内野監督)という試合に出られない3年生が練習を盛り上げ、次の試合の対戦相手を想定した紅白戦の際もサブ組の3年生DFたちがスタメン組の2年生攻撃陣に「このシステムやったらここに動かれたら相手は嫌がる」とアドバイスをしていたという。「選手が勝手に雰囲気を作ってくれる」(興國・内野監督)その代表的な選手の15番MF芝山和輝が率先して選手と監督の橋渡し役をこなしチームとしての完成度を高めていった。そして3年生のこの姿勢が試合に出ている2年生の責任感を刺激しチームの成長速度を加速させたのは間違いない。

興國は全国大会初出場となるが、内野監督は「大阪は日本一の激戦区やと思っている。いいチーム、いい選手、いい指導者がほんまにいっぱいいる。だから初出場でも大阪代表として出るからにはそれを証明しなきゃいけない」と参加して満足する気はない。「得意のドリブルで観客を盛り上げたい」(興國・10番MF樺山諒乃介)と選手も大舞台を楽しむつもりだ。クラブユースの誘いを断って入ってくる選手もいる程のタレント軍団が初の選手権全国大会で旋風を巻き起こす。

(文・写真=会田健司)

▽第98回全国高校サッカー選手権大阪予選
第98回全国高校サッカー選手権大阪予選