聖和学園がMF守屋の劇的決勝弾で決勝へ。東北学院はPK失敗に泣く

先制ゴールを決めた近藤健之介と喜ぶ聖和学園の選手たち(写真=小林健志)

 高校サッカー選手権宮城県大会は11月3日、キューアンドエースタジアムみやぎにて準決勝2試合が行われ、第2試合は5年ぶりの優勝を目指す聖和学園と、34年ぶりの優勝を目指す東北学院高が対戦した。

 前半は聖和学園のゆったりとボールを回しながら、ドリブルで打開する攻撃に対し、東北学院は安易にボールホルダーへ飛び込まず、陣形をコンパクトにしながら冷静に対応し、ゴールを許さなかった。このまま0-0で前半が終わるかと思われた38分聖和学園MF近藤健之介(3年)が相手のGK後藤謙(3年)が前方に出てきているのを見て、ロングシュートを放つ。これが後藤の頭上を越えてゴールに突き刺さり、聖和学園が先制して前半を終えた。

 1点を追う東北学院は後半開始早々の42分、右サイドから相手陣内深くに攻め入ったDF川合太一(3年)のクロスをFW髙橋竜馬(2年)が右足でゴールへ押し込み、同点とした。その後は聖和学園も攻撃の圧を強め、56分に切れ味鋭い縦に速いドリブルと、相手を動かし剥がすドリブルを併せ持つテクニシャンMF守屋湧磨(3年)を投入し、決定機を何度かつくり出すが、あと一歩でゴールを奪えない。

 そして1-1で迎えた73分、聖和学園DF山田宗汰(3年)がペナルティエリア内で、カウンター攻撃を仕掛けてきた途中出場の東北学院MF野木夢翔(2年)を倒し、東北学院がPKを獲得する。キッカーはエースストライカーのFW渡邉幸汰(2年)。ところが渡邉のPKはクロスバーの上にそれ、聖和学園は絶体絶命のピンチをしのいだ。このまま後半終了し、1-1で延長戦に突入した。

聖和学園MF柿沼弘大(3年)はチーム最多5本のシュートを放ち、決勝点も演出(写真=小林健志)

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 そして激闘を制したのは聖和学園だった。延長後半の93分、左サイドに開いたMF柿沼弘大(3年)のパスをゴール前で受けたのは守屋だった。「自分が入ってきて流れを変えたいと思っていました。ペナルティエリア内で自分ならゴールを決められると思い、入っていったらボールが転がってきました」と右足で放ったシュートが決まり、聖和学園が欲しかった追加点を奪った。このまま試合終了し、2-1で聖和学園が勝利し、4年連続決勝進出を決めた。

 薄氷を踏むような勝利に聖和学園加見成司監督は「学院の粘りがすごかったです。PKを外してもらって、勝たせてもらったゲームなので、決勝で頑張りたいです。育英さんは強いので思い切ってやるだけです」と、肝を冷やした試合をものにし、改めて決勝に向けて意気込んだ。途中出場の守屋については「スタートで出る力がある選手ですが、相手の穴を見てジョーカー的に使っています。右、左とポジションを変えながら使って、うまくはまりました」とチームへの貢献を称えた。守屋は先発で出られない状況でも「自分のために、ではなく、みんなのためにやろうと思っています。自分が流れを変えて点を取って勝つという思いでピッチに入りました」と前向きな気持ちを失わなかったことが活躍につながった。決勝で戦う仙台育英もサイドでクロスの得意な選手がいるが、「サイドの攻防で自分は負けません」と、足下の技術を磨き上げた聖和学園の選手らしいプライドを見せた。個人技集団が5年ぶりに全国の舞台に立てるか注目だ。

 対する東北学院橋本俊一監督は「県高校総体の時、前から追わせたのですが、後半うちの足が止まって0-2でやられました。プレスのかけ方をその時の反省を生かして行えてうまくいきました」と語り、キャプテンのDF山口啓太郎(3年)も「足に来ていてつっている選手もいましたが、後半最後の最後まで守り切って、延長前半までは1点でしのげていた」と守備が機能したことに手応えは感じていた。しかしながらあと一歩での敗戦。PKを外した渡邉幸について橋本監督は「PKを外したのは見たことがありません。プレッシャーがあったのかもしれません」とまさかのPK失敗に驚いていた。それでも「2年生も結構出ましたし、聖和への抵抗感無く堂々と戦ってくれました。来季にもつながる試合ができました」と橋本監督が振り返った通り、宮城の強豪をあと一歩の所まで追い詰めた経験を、今後につなげたい。

(文・写真=小林健志)

▽第100回全国高校サッカー選手権宮城予選
第100回全国高校サッカー選手権宮城予選