「技術ではなく気持ちで止めてきたつもりだった。でも、それでも止めきれなかった」。最後の大会を終えた浜松北の中村は、目を赤くしながらも気丈に語った。「今日の試合で報われたとは言えないかもしれない。でも、この努力を次のステージ——受験に活かしたい」。試合後、チームメイトと肩を叩き合いながら、悔いなくピッチを後にした。

　浜松北・澤根有貴監督も選手たちを讃える。「プリンスのチームに対し、準備も姿勢も本当に素晴らしかった。1点もぎ取ったのは、北高生の団結力と集中力の証です」。

　一方で、富士市立の中村はこの内容に満足していない。「まだまだ課題は多い。去年より手応えはあるけど、今年は絶対に全国へ行きたい」。2点目を挙げた遠藤も「1失点のような気の緩みは命取りになる」と気を引き締めた。

　一戦ごとに相手のレベルが上がるトーナメント。「まずはどんな形でも勝つことが大事」と語る指揮官の下、富士市立の戦いは続く。だが、この2回戦はただの通過点ではない。想いがぶつかり合い、プライドが交錯した80分。その先に、確かな成長が刻まれていた。

（文・写真＝西山和広）