しかし、ここから試合は予想外の展開を見せる。62分、ペナルティエリア付近でFW10伊東大和が倒されて獲得したFKのこぼれを市ヶ尾のDF2瀬戸優大がゴール前で押し込み1点を返す。「点を決めた後、ちょっと緩んでしまった」と林が悔やむように、橘に隙が生まれた瞬間だった。

 それでも橘は70分、荒川がバイタルエリアから縦にドリブルで持ち込み、思い切ったシュートで3点目。「ボールを触る回数少なかったから、チャンスが来たら思い切って振ろうと思ってた」という荒川の言葉通り、限られた機会をものにした。だが77分、市ヶ尾がFW9辻岡貴斗のPKで再び1点差に詰め寄る。「相手が勢い出てきてるのはわかったし、こっちも2点を取ってもういけるなみたいな雰囲気が出ちゃっていた」と荒川が認めるように、橘に慢心が生まれていた。

 終盤、市ヶ尾は必死に同点を狙う。80分には左サイドからの浮き球のパスを辻岡が合わせるがわずかにオフサイド。橘はギリギリのところで逃げ切った。キャプテンMF7鈴木聖成は「失点した時はチームが落ち着いてなかったから、自分が声をかけて落ち着かせた。関東、インハイ、練習試合も含めて、失点後の経験を積んできた成果が出た」と、チームを支えた存在感を見せた。

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▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選