試合後、森谷監督は少し苦笑いを浮かべながら険しい表情で語った。「警告をもらいすぎ。ゴールを取りきれず自分たちで苦しい展開にした。先週2年生の修学旅行を引率していて僕自身もチームがどういう状況なのか見えない部分もあった」。中断期間中の練習試合で2敗を喫していたという事実も明かし、「余裕があるわけじゃない。もう1回ピリッとしてくれたら」と選手たちに求めた。それでも「ベスト4ですごいねって言われるけど、選手権はあと1歩でも届かない。あと2段分上がらなきゃいけない」という言葉には、去年の東海大相模の活躍を超えて全国へという強い決意が滲んでいた。

 完璧からは程遠い勝利。だが、この試合で橘が得たものは大きい。「快勝して勝つんじゃなくて、こういう危ない試合を経験することで次の試合に繋がる」と林が言うように、苦しい時間を乗り越えた経験こそが、彼らを次のステージへと導くはずだ。全国への道は、まだ始まったばかりだ。

     

(文・写真=西山和広)

▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選