日大藤沢FW有川啓介が奇跡の復帰弾(写真=K,Nishiyama)

 勝利の裏には、一人の選手の執念があった。10月12日に行われた2回戦の秦野戦で右膝内側側副靱帯を痛め、長期離脱を余儀なくされた有川。

「最初は2ヶ月ぐらいかかるって言われた。でも、選手権だけはどうしても出たかった」と語る。

 加藤優トレーナーとの二人三脚のリハビリの合間も筋肉治療、電気治療や超音波を何時間も続け、ようやく練習に合流したのは試合の3日前。佐藤輝勝監督も「3日前はちょっと涙が止まらなかったですね」と声を詰まらせた。有川の将来を考え出場可否をギリギリまで見極め、万全を確認した上での起用。本来なら40分から60分の出場時間を想定されていたが、「ここまでメンバーやスタンドのみんなと作ったものを、ここで出し切らなきゃいけない」という気持ちで78分に交代するまで走り抜いた。信頼に応えた背番号9が、その左足で試合を決めた。

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▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
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