前年王者の興國は準々決勝敗退

 今大会最大のサプライズは優勝候補筆頭とみられていた前年王者の興國の準々決勝敗退だろう。2年生時から主力を担っていた選手が多く。J1横浜Fマリノス内定の3人GK田川知樹、DF平井駿助、MF樺山諒乃介に加え、J2ツエーゲン金沢内定で既にJデビューを果たしているFW杉浦力斗らを擁し、今年の興國はまさに黄金世代といえるチームだった。その興國を準々決勝で破ったのが大阪桐蔭。興國に対し徹底したチームプレーで対抗した大阪桐蔭の気迫溢れる全員守備は、改めてサッカーがチームスポーツだということを示した形だ。準々決勝の金光大阪東海大仰星では2点ビハインドから金光大阪が怒涛の反撃で逆転し、更に東海大仰星が土壇場で追いつき延長戦へ。最後はDF塩山友弥のゴールで5-4と壮絶な打ち合いを金光大阪が制した。ここで劇的な勝利を収め、その後決勝まで勝ち上がった金光大阪は、今大会の全得点がセットプレー絡みという特徴的なチームだった。特にMF松井雅功のロングスローは飛距離・スピード共にキック並みのボールを供給することができ、金光大阪の武器となっていた。FW沖本海斗のボールコントロールの技術も際立っており、攻撃陣をプレーで引っ張る姿は圧巻だった。前回大会準優勝校で、今大会履正社から唯一ゴールを決めたチームの阪南大高はFWのエース鈴木章斗が何度も華麗なプレーを披露。2年生の鈴木は来年の目玉選手になるだろう。他にも阪南大高には1年生ながらCKのキッカーを任されるDF今西一志やボランチのMF櫻本亜依万など楽しみなタレントが揃っており、来年のチームも楽しみなところだ。

 5回戦から登場のシード校がそのままベスト8に順当に進んだ今大会。プリンスリーグ勢はやはり戦力的・経験値で抜けていた。しかしベスト4の大阪桐蔭と準優勝の金光大阪を5回戦で苦しめた注目の新興勢力がヌヴェール香里とアサンプションだ。両チーム創部間もない新しいチームだが、今年JFLに昇格したFC TIAMO枚方から監督やコーチ陣を派遣しチームを強化。ヌヴェール香里からはMF中田湧大がザスパクサツ群馬に内定し初のJリーガーも誕生。来年以降も面白い存在になりそうだ。今年はインターハイが中止となり、3年生が全国大会を目指すことなく引退し、選手権を新チームで挑んだチームも多くみられた。目標にしてきた舞台がなくなってしまい、多くの選手が悔しい思いをしたことだろう。来年は新型コロナウイルスの影響が収まり、選手たちがピッチで伸び伸びサッカーを出来るよう祈るばかりだ。

(文=会田健司)