話題の“トルメンタ”

 対する高川学園は青森山田とは異なり、一戦毎に力を付けて14年ぶりに4強入りを果たした。星稜との1回戦は終盤に追い付かれたが、残り2分で2得点を奪って勝利。2回戦以降も1点差の接戦を制して、国立で戦う権利を掴んだ。日を追うごとに成長していく選手たちに対し、江本孝監督も目を細める。

 「1年間通じて(広報部、おもてなし部など)部署活動に励むことで、サッカー部として求めるモノを理解し、時間が経つにつれて自覚が高まり、部署活動を通じてグループとしての団結力が出てきた。そういうのが今大会においても、発揮されている。選ばれた30名やそれ以外の子が何をできるのか。ピッチ内外で何ができるのか。そういうアクションを子供たちから自発的に起こせるようになった」

 団結力は試合にも現れており、一体感のある守備でライバルたちを撃破。開会式で選手宣誓を務めた主将の奥野奨太(3年)は怪我で不在だが、GK徳若碧都(3年)、DF加藤寛人(3年)を軸に粘り強く戦って相手の攻撃を封じてきた。そうした守備陣の頑張りに攻撃陣も応える。MF林晴己(3年)、FW中山桂吾(3年)らが好機をしっかりモノにしてきた。そして、何より今大会を勝ち抜く上で欠かせなかったのが、話題になっているセットプレーだ。5人が手を繋いで回転してゴール前に入る“トルメンタ”、縦に選手が並んで一気に雪崩れ込む“列車”など、そうした多彩なトリックプレーでゴールを重ねてきた。準々決勝の桐光学園戦では“トルメンタ”の応用でゴールを奪うなど、新たなパターンも見せており、相手にとっては脅威となる。準決勝の相手は青森山田。一筋縄ではいかない絶対王者に対し、どのように挑むのか。粘り強く守り、少ない好機を仕留められれば勝利の可能性はグッと広がるはずだ。

 青森山田と高川学園の一戦はどのような結末を迎えるのか。王者と挑戦者の戦いから目が離せない。

(文=松尾祐希)

▽第100回全国高校サッカー選手権
第100回全国高校サッカー選手権