
(写真=デールさいたまスポーツクラブ)
―――海外で育成年代の指導を学び何か変えたことはありましたか?
旅行が好きだったこともあって今まで海外にはたくさん行ったし、海外のサッカーもたくさん観てきましたが、ヨーロッパの育成年代の指導現場は見たことがなかったので、環境はどこが違うのか、日本の子供たちと何が違うのか、そこに凄く興味がありました。実際に現地のリアルを見て環境や文化に大きな差を凄く感じました。サッカーの本質が凄く根付いていて、指導者もサッカーの全体像を理解している。これはあくまで僕のイメージなんですが、日本ではサッカーを観る人、プレーする人、教える人で結構分かれているイメージがあるんです。でも向こうの人はみんなが観るし、プレーもするし、サッカーをよく知っているし、教えたい人も多い。そういう文化の違いが大きいのと、仕組みのところでは小学校1年生からリーグ戦があって、レベルに応じたカテゴリー分けもされていて、選手は自分のレベルにあったチームでのびのびプレーできる。また成長の過程にあわせてレベルの合ったチームに移籍するという事も凄く自然に行われている。サッカーが文化として根付いていて、クラブも街に完全に根付いている。
だから良いものは取り入れたいですが、日本とは文化も人種も違うので、海外と全く同じことをするのは難しい。でもそれでも良いものは良いと思うので、少しでも取り入れられるものは取り入れたいと思っています。逆に日本人として誇れることにもたくさん気付きました。身だしなみや、几帳面なところだったり、整理整頓ができたり、礼儀もそう。そういう日本の文化に紐づいているところは、日本人らしくやるべきだと思いました。知人の紹介によりスペインでお世話になった現地コーディネーターの池田亮太氏とは歳も近く、考え方も共感できる部分が多々あってスペインの出会いから今でも交友関係を続けています。そんな繋がりもあり、2023年の春休みには初めてデールさいたまの小学生(希望者を募って)スペイン遠征へ行きました。池田氏に全面協力してもらい、僕が選手に経験させたい全てを叶えてもらいました。滞在中の全日程を同年代の子供がいるファミリーへホームステイ、サッカーは全員が別々のクラブで練習参加、昼間はトップクラブの練習見学や、スタジアムツアーも組んでもらいました。滞在期間中にサンチャゴベルナベウでレアル・マドリードの試合、ワンダーメトロポリターノでアトレティコの試合もどちらも観戦でき、選手たちは最高の経験だったと思います。帰国後も少しでも世界に触れる経験をクラブに還元したいと思い、マドリードのプロクラブからカンテラの現役コーチを招聘してサッカークリニックを開催しました。全ては経験とやってきたことが1つ1つ繋がっていく、クラブ立ち上げから13年経ちますがまだまだ良くなりますね。
―――川下代表もコーチを始めた頃は人前で話すのが苦手だったけど、今では得意なことになった。日本に比べてドイツやスペインの子供たちの方がコミュニケーションや自分を表現することが上手いとのことでしたが、それは環境や経験で変えられるのでしょうか?
人前で話したり、人前で何かをやったりするのは大人でも最初は嫌じゃないですか。自分も最初はできればやりたくないと思っていましたが、いざクラブ運営しながら、監督や指導者という立場で現場に立つと、人前で喋れないと伝えられない。伝えたいことを如何に心に刺さるように伝えるかってことも大事なので、それは凄くこだわるし、考えるようになりました。今思うと多分コーチ駆け出しの頃はちゃんと伝えられてなかったかなと思いますが、自分自身がやるしかない環境に身を置いたことでクラブと共に自分自身も成長できたと思います。小学生年代から高校生年代までのチームに関わり続けた事もあって、今は自信を持って選手にも親御さんにも伝えられると思います。
日本は島国なので、外国人との交流も少なく日本語以外を使う場面がほぼないと思います。ヨーロッパであればユーロ圏は行き来が自由ですし通貨も同じ、でも言語は違う。みたいな当たり前があると思うんです。子供のうちから色んな経験をして、世界を知るってことは人生の幅が広がると思うし、コミュニケーション力の向上にも大きな変化が見込めると思っています。意図的にやらせるのではなく、環境に身を置くことが大事だと思いますね。
#3につづく
(文=会田健司)
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