大野監督は生徒の自主性を促す(写真=多田哲平)
――責任感は何に取り組むうえでも大事なモチベーションになりますよね。では勉強とスポーツを両立できる生徒の共通点はなんでしょうか。
ベクトルが自分に向いているかですね。自分の目標に対してやるべきことを実行できるか。「全国に行きたい」といくら口で言っても行動が伴わなかったり、人や環境のせいにしてしまったりする子は少なくない。ただ自分自身を見つめている子は勉強もサッカーも、学校生活においてもブレがない。
上を目指す人間の熱意は言動や振る舞いに表れます。「自分は上手くないから」と言い訳する人はいつまでもAチームには上がれない。現状どんなレベルだったとしても「俺は絶対にレギュラーになるんだ」とギラギラしている子は努力を怠らないから、どんどん上手くなるし、必ずAチームに上がってきます。そして、そういう子のほうが勉強の成績も伸びていきます。
――勉強とサッカーを両立するからこそ、身につくものはなんだと思いますか?
自分で責任を持った行動が取れるようになること。人生は常に選択の連続ですが、サッカーと勉強に向き合うことで、そこに基準が生まれる。先々を見据えて「こうなりたいからこっちを選ぼう」と、そういう選択ができるようになります。両立できず中途半端な子は「楽なほうがいいや」と、そんな基準で決めがちですね。
――その基準は勉強やスポーツどちらかをやっているだけでは身につかないものでしょうか?
どちらかだけでも身につくかもしれませんが、両方に取り組むことで選択肢が広がります。大学を目指す理由も、「遊びたいから」ではなく「サッカーがやりたいから」というほうが勉強に身が入ります。芯のある子というのは、勉強にしてもサッカーにしても自分で何か軸を見つけ、それを基準に行動しますよね。
――芯がある子は何事にも真摯に取り組むと。
都合良くあれもこれも手を出して、結局どれも中途半端なのが一番ダメ。一度自分が決めたことを最後までやれない子は何をやっても途中で投げてしまう。やり切るからこそ見えるものがあるし、残るものがあると思うんです。一本の強い幹ができるというか。
今できることに向き合えばいいのに、現代の子は気持ちが落ちてしまうとフェードアウトしてしまいがち。価値観は変わるものですから、途中で方向を変えることをすべて否定するつもりはありません。ただ「自分の想い通りにいかないから辞めます」と逃げてしまうのはもったいないですよね。そういうことは強調して生徒に伝えていきたいです。
――最後に市立浦和高校サッカー部の今後のビジョンを聞かせてください。
サッカーの成績上ではやっぱり、しばらく行けていない全国大会の舞台を見せてあげたい。そのために普段の生活から意識レベルを上げていき、選手がもっと成長できる環境を提供していきたいですね。
またサッカーや勉強だけでなく地域貢献もさせていくつもりです。これから社会に出ていろんな方面で活躍していく子たちなので、いろんなことを経験させて、振り返った時に「高校の3年間があったからこうなれた」と言えるようにしたいです。
(文・写真=多田哲平)