都立王子総合GK吉岡ディラン
東京の空に、夏の終わりを告げるような熱気が漂っていた。第104回全国高校サッカー選手権東京予選1次予選。都立王子総合は、たった9人という圧倒的に不利な状況で、成城との2回戦に挑んだ。結果は0-17。大敗という言葉では片付けられないほどのスコアだった。本来なら誰もが下を向くような試合後、都立王子総合の選手たちには充足感が満ちていた。そんな中でひときわある選手は清々しい表情を浮かべていた。背番号1のGK吉岡ディラン、ゴールを守り抜いた彼の言葉には、敗戦の中に確かに見つけた“希望”の光があった。
「正直、試合の最初の方はあんまり乗る気じゃなかったんです。ちょっと落ち込んでて」。試合序盤、すでに7点のビハインドを背負った時点で、彼はそう感じていたという。それでも、ピッチに立つ以上、逃げることはできない。その胸の内には、中学時代から続けてきたサッカーと、ゴールキーパーというポジションへの確固たる誇りがあった。体格を生かした高さと強さ、相手と1対1で対峙する際の冷静さ。それは、彼が試合中に輝きを放った瞬間でもあった。
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▽第104回全国高校サッカー選手権東京予選
第104回全国高校サッカー選手権東京予選