岡本安里のドリブル突破から流れ込んだマイナスのパス。密集するディフェンスライン。普通ならためらう場面で、鈴木は迷わず左足を振り抜いた。「先週はゴール前で足を振るっていう練習をいっぱいしていた」。この1週間、彼が反復してきたのは、シュートを打つという行為そのものだった。「前に(相手の)選手がいっぱいいたんですけど、半歩ずらして相手の股下を狙ってキーパーの死角を取った」。計算されたずらしが生んだ同点弾。それは単なる技術ではなく、夏から積み重ねてきた覚悟の結晶だった。

「監督さんからどんどん足を振れば何か起こるって言われていた」。安達伸彦監督の言葉を信じて、遠い位置からでも振り抜く。インターハイで味わった悔しさ。そして、弱気になって足を振れなかった自分。その記憶が、今の彼を突き動かしていた。ゴールに突き刺さったボールは、4カ月の想いを乗せて、チームに炎を灯した。

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▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選