準決勝の8得点に続き、大量7ゴールで秀岳館を下した大津が、3年ぶりの選手権出場をつかむ
大津イレブン (写真=井芹貴志)
第100回全国高校サッカー選手権熊本予選は決勝を迎え、3年ぶり18回目の出場を目指す大津と、7年ぶり2度目の出場を狙う秀岳館が対戦。新人戦準決勝、高校総体決勝に続いて今季3度目の対決となった。
序盤から攻め込んだのは秀岳館。全体を押し上げ、CBの仁木悠真と西村陽佑からのフィードで前線にボールを送ると、初先発となった右のFW豊山太一朗の仕掛けやドリブルが武器のMF深川碧斗の積極的にミドルなどから大津ゴールに迫る。
一方の大津は、4-4-2の陣形でバランスをとりながらスライドしてバイタルへの侵入は許さず、奪ったボールは長身のFW小林俊瑛をターゲットに、手数をかけず秀岳館DFラインの背後へ供給してチャンスをうかがう。スコアが動いたのは7分。左サイドからの攻撃でこの試合1本目のコーナーキックを得た大津は、キャプテンのMF森田大智が送った正確なボールに小林が合わせる。秀岳館GK小林拓未もしっかり反応してボールに触れていたが、高い打点からの球速のあるシュートを弾くには至らず、大津が先制した。
リードを許した秀岳館だが、あせることなく丁寧にボールを動かし、ピッチを広く使いながら、緩急のあるコンビネーションから突破を図るなど反撃。逆に大津は、思うようにボールを保持できない状態ながら、出足の早いチェックと球際の強さで運ばせず、早い切り替えから相手の背後を突くという狙いが明確になっていく。
10分、MF薬師田澪からのボールに抜け出したMF川口敦史がループで狙った場面は得点にならなかったが、続く13分、再び薬師田のスルーパスに抜け出したFW一村聖連が左足で流し込み2-0。大津はさらに32分にも、準決勝まではサイドバックとしてプレーし、このゲームで1列前で起用されたDF日髙華杜が相手の背後に抜け出して3点目を奪い、リードを広げた。
大津vs秀岳館 (写真=井芹貴志)
後半に入っても秀岳館がポゼッションではやや上回っていた印象で、48分にはペナルティエリア付近でフリーキックのチャンスを得るが、MFペドロが左足で直接狙ったシュートは跳ね返されて得点ならず。対して大津は、50分に右からのロングスローを薬師田が頭で押し込み4点目、直後の51分にも自陣からの早い攻めで日髙のクロスを小林が合わせて5点目と、得点を重ねる。
追う秀岳館もフレッシュな選手を投入して活性化を図るが、大津の堅く安定した守備を崩しきれず、逆にカウンターを受ける展開。それでも、なんとか次の点を許さず終盤を迎えたが、大津は最後まで好機を逃さない貪欲さを発揮し、アディショナルタイムに入って交代出場のMF碇明日麻、FW高畑涼がそれぞれ得点を挙げ、大量7点で秀岳館を下して、3年ぶりの全国への切符をつかんだ。
敗れた秀岳館の段原一詞監督は、「立ち上がりや失点した直後など、大事なところで集中できなかった。ボールも持てたし、ゴール前まで持っていくだけでなくシュートも打ってチャンスはあったが、決めきれなかった」と厳しい表情。キャプテンのFW古賀渓太郎は、「自分たちのミスを相手は逃さなかった。切り替えやプレー強度、止める、蹴るの技術の正確さなどが自分たちには足りなかったと思う」と話したが、「やってきたことは出せた」とも述べたように、大津相手に1歩も引かない姿勢を貫いたと言える。
監督に就任して初めての選手権出場となった大津の山城朋大監督は、「相手のビルドアップがうまくラインを下げられたが、カウンターやセットプレーには自信を持っていたし、相手の守備陣形が整う前に、高さやスピードといった個の力を生かそうと取り組んできたので、早い時間に先制できたことで、これまでやってきたことを徹底できた」と振り返る。ベスト8に進出した夏の全国高校総体や3位となった和倉ユースフェスティバル、Jユースの強豪と互角以上に渡り合う中で最少失点を記録している高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグWESTでの経験が存分に生かされた格好だ。
「1年の時から試合に出てきたが、選手権には出られず悔しい思いをしてきたし、選手権に出ないままでは終われないと思ってきた。インターハイではベスト8で敗れたけど、そこからプレミアで負けていないことも自信になっているので、今日のように決めるべきところで決めること、1本1本を大事にしていきたい」と話すのはキャプテンの森田。3年ぶりの選手権で狙うのは、もちろん初の全国制覇だ。
(文・写真=井芹貴志)
▽第100回全国高校サッカー選手権熊本予選
第100回全国高校サッカー選手権熊本予選