一方、市立橘も初のインターハイ出場を目指して、堂々たる80分間を戦い抜いた。結果は敗戦でも、等々力のスタンドに押し寄せたその熱量は、確かに“本気”のものだった。

「勝負どころで勝てるのが桐光学園の伝統。でも、今年のチームは決して順調じゃなかった」。そう話した鈴木監督の言葉には、試行錯誤の末に掴んだ価値が込められている。

「このチームにはまだ伸びしろがある。雑草のようにトライし続けてきたからこそ、ここから本当の強さを身につけていける」

 プレッシャーを背負いながら、キャプテンマークを巻いた倉持も、これからを見据える。

「憧れたのは全国で戦う桐光学園。だから、自分たちが今度は“憧れられる側”になりたい」

 言葉に滲んだ覚悟とワクワク感。“弱い代”と呼ばれた彼らは、悔しさを抱えながら、勝ち続けることの意味を学んできた。その歩みはまだ途中。だが確かに今、神奈川に、新たな桐光学園の物語が紡がれ始めている。

(文・写真=西山和広)

▽令和7年度全国高校サッカーインターハイ(総体)神奈川予選
令和7年度全国高校サッカーインターハイ(総体)神奈川予選