ここで本コラムのポイントである「選択」について一つ。「何かを選択することは何かを選択しないこと」

 日本でプレーをする場合、おおよそどのカテゴリーでも3~4月にリーグが始まります。シーズン途中加入などの例もありますが、シーズンが始まる前には新体制の方針の下、選手の補強は終わっています。

 なので、僕の場合1回目の4月にインドに行く際、今インドに行ったら今シーズンは無所属になるかも(当初はタイから帰国後すぐ行く予定でしたが、行く事になったのは4月上旬でした)、という覚悟を持ってインドへ行きました。

 帰国後もチームからの返事はなく、インドリーグ(I-League)のシーズン(ヨーロッパと同じ秋~春での開催)が終了したので、チーム全体、運営陣の活動も完全なオフに入ってしまいました。契約に結び付けばすぐに動く必要があるので、帰国後もどこかのチームに加入を前提にした練習参加もせず、ただただ待つのみ。最終的に話が決まらなかったと分かったのは9月頃でした。何かを選択するということは何かを選択しないということ。縁とタイミング、そして運。海外トライアルの結果には、これらの要素も大きく影響を及ぼします。

 そして年末に、契約が決まってこれから現地と書類のやり取りをするという連絡が入ったのですが、僕は違う方を通して年明けにミャンマーへトライアルに行きました。契約の連絡が入ったものの、ここまで来てどこまで本当に起こり得る事なのかという不安を抱えていました。加えて、ミャンマーはリーグ開幕直後だったのか、現地からは今すぐに来てくれと言われました。選手登録の期間を延ばすからとにかくすぐ来てくれと。なので、契約が決まれば早い方に決めてしまおうかなという安易な考えもありました。もはや人としての判断もめちゃくちゃです。

 結果はもちろんどちらも上手く進む事もなく、契約が成立していた話もなくなりました。その後、時間を経てまた別のチームに契約が決まったと連絡が入ったのですが、最終的には破棄になりました。それが2013年の3月です。

 チームに所属せずにトライアウトに行った2012年。といっても1年のうち延べ4ヶ月ほどでありましたが、このような日々を過ごしていました。

 今思うとこの年はメンタル的な浮き沈みが多かったと思います。トライアルに行くものの現地では回答が分からず、待つのみの毎日。契約が決まる「かもしれない」し、決まらない「かもしれない」。僕の選択は待つことでした。それでもとりあえず生活していかなくてはいけない毎日。1年経った後、自分は何をやってきたのか?目標に近づいているのか?その場しのぎの選択で過ごしてきたのかなと思ってしまうような時もありました。チームに入っているという事は、どこかに属すという点で人に心理的な安心感を与えることも出来るのだなとも思いました。

 ここまで1年間続けてこの結果となり、さぁいよいよどうする?というのが当時の心境です。しかし、あれこれ考えても始まらない。どの選択肢を取るにせよ、とにかく動いていかないといけない、と頭の中では思っていました。それと同時に、しっかりと毎日トレーニングをしないとダメだと感じていました。

 そして、間もないタイミングでHBO東京というチームを紹介してもらいました。最初に聞いたのは「海外に行くためのチームがある」ということ。さっぱりイメージがつきません。まずは詳しい話を伺おうと思い、すぐに練習に参加しました。それが2013年3月下旬のことです。

 次回 HBO東京での1年間とカンボジアトライアル、契約。

■カンボジア豆知識
人口1470万人
面積は18万平方キロメートルと日本の2分の1弱。
おもな産業は農業、縫製業。最近では外資系企業の進出も増えている。アンコールワットが有名。

■カンボジアサッカー事情
サッカーは人気が高いスポーツで、プロリーグも設立されている。ASEANサッカー連盟には1998年に加入。2013年にはJリーグとパートナーシップを結ぶなど、東南アジアで存在感を増してきている。