流れを引き寄せたGK淺沼李空のビッグセーブ。西武台が市立浦和との注目カードを制す

流れを引き寄せた西武台GK淺沼李空(写真=石黒登)

 試合は序盤から西武台がペースを握った。昨年の代でも主力だったMF福沢安莉を中心に細かくボールを動かしながらサイドアタック。前半5分には福沢のクロスに今年はサイドバックを務める主将のDF原田蓮斗がヘディングで狙っていく。30分にはセットプレーの2次攻撃からDF安木颯汰がヘディングで折り返し、FW大畑航也が狙ったシュートがクロスバーを叩いた。

 一方、「前半は圧に負けた」(大野恭平監督)という市立浦和も5バックでしっかりと守備。危ない場所には常に選手が立ち、スペースもきっちりと埋めるなど決定機は多くは作らせなかった。

 すると後半は市立浦和が前へ。MF金澤春輝のスピードやMF小松悠太の仕掛けで迫ると、16分にビッグチャンス。MF栗田幹大のパスからFW林隆希がディフェンスを振り切って右足シュートを放つ。シュートは枠を捉えていたが、これを西武台の新守護神・淺沼李空が右手の人差し指でわずかに触れてかき出すビッグセーブ。これには守屋保監督も「ああいう形からゴールが生まれてしまうと、相手にどんどんリズムがついてしまう。あれを止めてくれたのは助かった」。

 ここを好機と見るや西武台は直後に怪我明けで出場はまだ20分が限度だというFW細田優陽を投入。「あのファインプレーがあったところで細田を入れられた。あれ(細田の投入)がひとつうちとしても勝負のスイッチを入れるサインだと子供たちもわかっている」と守屋監督。そしてこの交代がピタリ。24分、相手守備陣のミスを見逃さなかった細田がゴールネットを揺らした。

 終盤も西武台は交代で入ったMF松原海斗が鋭い縦突破で何度も左サイドをえぐるなど最後まで攻め続ける姿勢。追加点は生まれなかったが、市立浦和との難局を制して3回戦進出を決めた。

 今年のチームは「全体的にボールを握れたり、特徴を出せる子たちがいる」と指揮官。昨年はチーム事情やコロナ禍による練習減などもあり、最初からある程度形を作って、そこに選手を配置してチーム作りをしたこともあって、それ以上にチーム力が上がらなかったところもあったが、今年は「今後どうやってチームに育っていくのか。そこの部分の成長があると思っているので、そこもっと表に出して、試合を重ねるごとに作れるようになっていったらなと思っています」。

 細田の速さや松原のドリブル、福沢のゲームを作る力や回収から的確に捌くMF吉野光の正確さ。一昨年、昨年とCBだった原田のSB起用も「積極的なディフェンス」という彼の最大の持ち味を発揮させるためのもの。またDF武笠隼季のボランチ起用など、もうひとつ手を加えたいという。それぞれの特徴が組み合わさってチームとしてどう成長していくかは楽しみなところ。

 そのためにもいまは結果以上に「ひとつひとつどれくらいできるのか」が大事。そこの見極めもちゃんとしながらインターハイ、そして最後の選手権に向けてチームの土台作りを進めていく。

記事提供:埼玉サッカー通信・石黒登

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