この逆転劇の背景には、夏場からの厳しい走り込みがあった。「新しいコーチの指導で走りのメニューが増え、今日も足が重かった選手が多い中、練習が繋がった」と天田が振り返るように、地道な準備が最後の力となって現れた。

「できるだけ勝ち続ける。悔いなく勝ち続けるのが目標」と伊藤が語るように、チーム全体に湧き上がっていたのは喜びと同時に、より高い目標への強い意志だった。

 2点ビハインドという絶体絶命の状況から、チーム一丸となって勝ち取った勝利。それは単なる逆転劇以上に、高校サッカーが持つドラマ性と青春の輝きを凝縮したような80分間だった。2次予選では強豪校がひしめく中での戦いが待っているが、この日見せた諦めない心と走り勝つ意志があれば、さらなる高みを目指すことができるはずだ。

 気温31.4℃の残暑の中で繰り広げられた熱い戦いは、秋風と共に新たな物語の始まりを告げていた。

(文・写真=西山和広)

▽第104回全国高校サッカー選手権東京予選
第104回全国高校サッカー選手権東京予選