両軍ともになかなか決め手を欠く中、スコアが動いたのは後半30分のことだった。浦和西は右サイドを駆け上がったDF古山貴翔のクロスにアタッカー陣が一気にエリア内の3点になだれ込むと、このプレーが相手のハンドリングを誘ってPKを獲得。これをエースの森がゆっくりと助走を取りながら冷静にゴール左に突き刺した。残り10分を切って浦和西がついに均衡を破る。

終盤は1点を追う埼玉平成が反撃に出たが、浦和西も最後まで集中力高く挑んでシャットアップ。ウノゼロ(イタリア語で1ー0の意)ゲームをものにした浦和西が16強入りを決めた。

大会前にはロシアW杯で日本代表を決勝トーナメントに導いた同校OBの西野朗・元代表監督のW杯での話を聞いて刺激を受けた。キャプテンのMF唐牛七海は「西野さんもさすがに2週間という短い時間でチーム作りをするのは難しくて、そこは選手主導でやっていたと言っていた。選手がこうしたい、こうしたいという意欲で、自分たちで話し合ってやっていたというのを聞いて自分たちにも刺激になりました。指導者に言われたことだけをやっているんじゃダメで、やっぱり最後は自分たちで考えたり、そういうのが大切なんじゃないかと学びました」。

この日チームは主に守備の面でその主体性を発揮。ポゼッションしてくる相手に対し常に危険な中央のエリアは切りつつ、そのことで空いてくるサイドについてはピッチ内で話し合いながら修正、対応。アタッキングエリアで相手に自由を与えなかったことが難敵撃破に繋がった。

【次のページ】 今年度浦和西を悩ませてきたディフェンス問題