苦戦しながらも地力を感じさせる戦いぶりを見せた創成館が諫早商を下し準決勝へ
創成館イレブン(写真=藤原裕久)
「やらかしました」。今年5月に高総体県大会準々決勝で諫早商に敗れた直後、創成館の久留貴昭監督は、絞り出すようにそう呟いた。昨年度に全国高サッカー選手権に悲願の初出場を飾ったとは言え、創成館はサッカーにおいてはまだまだ新鋭校である。対して、経験豊富な西信幸総監督・田羽田亨監督・元Jリーガーの山口哲治コーチらが率いる諫早商は長崎県央地区の強豪として長い伝統を誇り、毎年しっかりとチームを作り上げてくる。高総体での創成館はまんまとその手堅さにはめられてしまったのだ。それから半年後に再び両校は対戦し、今回は苦戦しながらも地力を感じさせる戦いぶりを見せた創成館が諫早商を下して準決勝へと歩を進めた。
高総体で諫商の大型FW森祐月の高さに苦戦した創成館は、この試合では森へのマークを徹底。高さのある西元準也・松井泰斗のCBコンビがしっかりとケアして、森にボールを入れさせず、ボールを奪ってからはスピードのあるサイド攻撃と、ハイラインからの背後への抜け出しで諫商ゴールへ迫っていく。攻勢の創成館は前半18分にゴール前でボールをおさめた岡優希が先制ゴール。1点を追う諫商は何とか前にボールを運ぼうとするが、創成館の早い帰陣と西元・松井のCBコンビ、そして創成館の守護神、永田健人の守りを突破することができない。逆に堅守から素早くサイド攻撃へつなぐ創成館は、25分に田中凌雅が追加点を決めて2-0。
諫早商 vs 創成館(写真=藤原裕久)
後半に入り、左サイドの梅原星太を起点に反撃を狙う諫商だが、創成館の堅守は揺るがぬまま。逆に54分に山崎雄貴にゴールを許して3失点目。その後も創成館は安定感のある試合運びを見せるが、交代を繰り返す中で徐々に守備の強度は低下。これに対して1点を狙い続ける諫商は、75分に山口空大のシュートがディフレクションして決まり1対3。さらに77分にも梅原のミドルで1点差へと追い上げる。その後も勢いを持って攻めようとする諫商業だが、ここから創成館も踏ん張って立て直すと、80分に途中出場の井村雄輝がゴールを決めて4対2。点差を再び2点に広げた創成館がそのまま試合を終了し、ベスト4へと進出した。
諫早商はトップの森にボールを集められず、ゲーム全体では創成館ペースを崩せなかった。それでも2得点を決めて「あわや」の雰囲気を作ったことは評価されるべきだろう。一方の創成館は試合後、久留監督から選手たちに「過信するな!ひたむきに!それを忘れるな!」という檄が飛んでいた。決定機を逃し、逆に少ないチャンスを決められて敗れた高総体を「自分たちに負けた」と語る久留監督にとって、勝ったとはいえ不要な失点を喫した諫商戦は不満が残るものだったようだ。それでも「6月くらいまでは、まだチームになっていなかった」と語るチームが着実に成長していることは、2失点後の得点や、サイドやスピードを駆使した攻撃の多様さからも感じることはできた。2年連続の選手権出場を目指す創成館にとっては、それは大きな収穫でもあったろう。
(文・写真=藤原裕久)
▽第100回全国高校サッカー選手権長崎予選
第100回全国高校サッカー選手権長崎予選