青森山田イレブン

 8月21日に開催される全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会の準決勝。日東シンコースタジアム丸岡で行われる一戦は静岡学園青森山田の組み合わせとなった。2019年度の高校サッカー選手権では静岡学園が土壇場で試合をひっくり返し、3−2で勝利。青森山田の連覇を阻止し、24年ぶり2度目、同校初の単独優勝を手中に収めた。

 あれから約1年半。両者ともに嗜好するスタイルに大きな変化はない。

 フィジカルの強さに定評がある青森山田は堅実な守備でリズムを作り、遅攻と速攻、そして得意のセットプレーで相手ゴールに襲い掛かる。とりわけ、今大会は4試合で24得点。大会最多得点記録にあと2点と迫っており、1回戦から圧倒的な攻撃力でゴールを積み重ねてきた。昨季までは4-2-3-1や4-1-4-1をベースに戦っていたが、今季は前線にタレントを生かすために4-4-2を採用。推進力に長けたFW渡邊星来(3年)、身体の強さを生かしたポストワークが武器のFW名須川真光(3年)が最前線でボールを収め、スピードと突破力を持ち合わせる左のMF田澤夢積(3年)、右の藤森颯太(3年)が積極的に仕掛けていく。前線の4人を生かす上で、欠かせないのがダブルボランチの松木玖生(3年)と宇野禅斗(3年)。U-20日本代表候補に飛び級で選出された前者が高い位置で攻撃を組み立て、隙あらば自らもゴールを狙う。一方、後者は松木の後ろでバランスを取りながら中盤の舵取り役を遂行。的確なポジショニングでセカンドボールを拾いつつ、驚異的なボール奪取能力でピンチの芽を刈り取る。

 春先は不安定だった守備陣も日増しに連携面が向上し、青森山田らしい身体を張った守備と空中戦の強さで相手を封じる術を身に付けた。丸山大和(3年)と三輪椋平(3年)のCBコンビを軸に守り、今大会は準々決勝で喫した2失点しか相手にゴールを許していない。まさに“高校サッカー界の横綱“と言える強さで準決勝へと勝ち上がってきたのは確かだ。

静岡学園イレブン

 一方の静岡学園は伝統の攻撃的スタイルで準決勝の舞台に駆け上がってきた。選手権を制した2年前と比べると、荒削りでチームとしては未完成。しかし、今季は攻撃に特徴を持つタレントを最終ラインから最前線まで揃えている。最終ラインに入る三宅優翔(3年)、U-17日本代表候補・行徳瑛(2年)のCBコンビはビルドアップに定評があり、コンディション不良でベンチスタートが続くU-18日本代表候補の伊東進之輔も足元の技術が高い。SBの人材も豊富で野村海翔(3年)、清水和馬(3年)、荒井駿希に加え、サイドハーフを主戦場とするドリブラー・西村湧志(3年)も対応可能。ボランチに入る玄理吾(3年)は今大会屈指のゲームメイカーで相手を外すスキルとパスセンスに定評があり、相方の菊池柊哉は攻守のリンクマンとして存在感を発揮している。2列目も個性的なタレントが揃い、スピードで相手を置き去りにするMF川谷凪(3年)、テクニカルなドリブルが特徴の古川陽介(3年)がチャンスを作り、今大会で4得点を上げている最前線の持山匡佑(3年)も狡猾な動きでゴールを狙う。

 果たしてどのような結末が待っているのか。青森山田は交代選手をうまく使いながら連戦を戦うマネジメントを施し、一方の静岡学園は相手に応じて先発メンバーを変更してきたため両者ともにコンディションも悪くはない。チームとしての完成度は現時点で青森山田が上。しかし、静岡学園も今大会を通じて経験を積み、試合を重ねる毎にゲームの運び方を学んで自分たちの武器を発揮できるようになってきた。だからこそポイントになるのは先制点。静岡学園としては早い段階で奪い、勢いで一気に青森山田を押し切りたい。逆に青森山田は先行できれば逃げ切る力があり、守りを固めれば静岡学園であっても簡単には打開できないだろう。

 異なるスタイルを持つ両者の対決から目が離せない。

▽令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)