63分には、相手のCKからの二次攻撃を断ち切ったDF16竹之内恒輝が独走し、最後はブロックされながらもゴールに迫る。70分にも竹之内のドリブル独走からのシュートがポストを叩き、こぼれ球に詰めたFW9林優斗の一撃は枠を外れた。「前半は相手に飲まれちゃって。後半は切り替えて強度を上げた」と語る波壁の言葉通り、橘の時間は確実に増していった。

 そして、迎えた93分、ついにドラマは生まれた。右CKのボールに山本が合わせ、ゴールネットを揺らす。歓声が等々力を包む。チームを救う一撃を決めた山本は「自分はあまりいいプレーができてなかったけど、最後に決め切れて良かった」とホッとした表情を見せた。その後、すぐさま相手陣内深くでボールキープを始めた選手たちに森谷監督は「選手たちが勝手にキープし始めて怖かったけど、別にいいかと思って」と笑顔で振り返る。緊張に満ちた試合を終えた彼らの心には、それでもやり切った確かな手応えがあった。

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▽令和7年度全国高校サッカーインターハイ(総体)神奈川予選
令和7年度全国高校サッカーインターハイ(総体)神奈川予選