一人少ない中でも同点に追い付いた常翔学園

 一人少ない中、1点ビハインドで後半を迎えた常翔学園。苦戦が予想されたが、常翔学園イレブンがこの逆境を跳ね返す。

 常翔学園は後半開始からハイプレスを仕掛けると、履正社を押し込む。すると40分、常翔学園は右サイドのスローインからチャンスを作ると、最後は7番MF山口蓮生が強烈なシュートを右ポストに当てながらねじ込みゴール。

 数的優位を活かせず同点に追い付かれてしまった履正社も、これでスイッチが入ったかのようにここから怒涛の攻撃を仕掛ける。48分には2番DF西坂斗和が相手DFからボールを奪い決定機を作ると、54分には左CKを20番DF平井佑亮が折り返したところを西坂がシュート。59分には中央を崩し14番MF川端元がゴール前フリーで左足を振り切る。

 しかしいずれのチャンスも活かせず嫌な空気が流れた履正社を救ったのはまたしても名願。62分、左中間フリーでボールを受けた名願はドリブルでカットイン。「一人抜いてから相手が食いついてこなかったので、利き足の方に持っていけて自然とシュートが打てた」とバイタルエリアに侵入した名願はDFやGKのタイミングをずらしながら右足でゴールネットに突き刺した。

 これで常翔学園を突き放した履正社が2-1で勝利。苦しみながらもなんとか初戦を突破した。

 「プレミアで経験させてもらっているにもかかわらず、思った以上にCBとボランチの4人がバタバタしてしまって。やっぱりこれがトーナメントの怖さ。相手が蹴って来るし、その勢いでセカンドボールを拾われて、相手がアクセル全開で来ている中で、こちらは視野が狭くなってボールが落ち着かない展開が多かったですよね」と納得の試合とはいかなかった履正社の平野直樹監督。

 そして自チームとは逆に「相手は失うものがない感じで来ていて、相手の方がハツラツとしていました。持っている力を出せていたし。本当によく頑張っていて凄くいいチームでした。ハートで戦っていたし、ハートとハートの戦いだったらうちは負けていた。見ていたら応援したくなるチームでした。応援している人も含めてピッチの中も外も戦う空気を自分たちで作っていて、高校生らしくて好感の持てるチームでした」と常翔学園の戦う姿勢を絶賛した。

 プレミア勢相手に一歩も引かず、見事な戦いを演じた常翔学園。「4回戦、5回戦はコンディションを考えずに追い込んで、今日に向けてはコンディションを考えてやってきました」(満冨監督)と、この試合にかける気持ちは間違いなく相手に勝った。一人少ない状況になっても一人一人がその分も走る事で穴を埋めた。

 「僕らはいつもそうなんです。泥臭く守備から入ってやらないといけないのを子供たちはわかっていて、それを悟らずにやってくれるんです。真面目に取り組んでくれて、徹底してくれる子たちなので。勉強もようするし本当にいい子たちです。ほんまに勇気をもって立ち上がりからやってくれました。よくやってくれました」と満冨監督。炎天下の中でも最後まで運動量は落ちず、ゴールと勝利を目指してピッチを走り回った。敗れたものの、この試合で得た自信は今後の常翔学園イレブンにとって大きな財産だ。

 (文・写真=会田健司)

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