興國がMF永長鷹虎の2発で逆転するも、終盤に東海大仰星が松名のゴールで追い付き2-2のドロー

2本のPK奪取で2ゴールをあげたMF永長鷹虎はこれで得点ランキングトップタイに浮上

 高円宮杯 JFA U−18サッカープリンスリーグ2021関西の第12節が9月11日にJ-GREEN堺で行われ、首位履正社を追いかける2位興國(大阪)と5位東海大仰星の一戦は両チームが後半に2得点を上げ2-2のドロー。この結果、10試合消化で勝ち点15の東海大仰星は5位のまま。11試合消化で勝ち点21の興國は3位に順位を下げた。

 「2節連続で順延になって、夏休みに対外試合が出来ない期間があったので4週間ぶりの対外試合」(中務雅之監督)という東海大仰星だったが「興國さんの特徴をよく把握しながらゲームを進められた」と中務監督が言うように、興國のビルドアップに対し積極的に前線からプレスをハメに行き、これが功を奏した。

 9分、東海大仰星は相手のビルドアップを高い位置でカットして素早く攻めると最後は18番FM岩井遼斗が右足を振り抜きクロスバーに弾かれる。13分にも裏に抜け出した9番FW中務隼が決定機を迎えるもシュートはゴール左に外れてしまう。その後も19番MF玉山樹が流動的にサイドに流れ起点を作ると、8番MF沖秀大が積極的にボックス内からシュートを放っていく。

 対する興國は「(最終ラインのビルドアップ)後ろを3枚でやるなと言っていたのにDF田上が怪我をしたのもあってメンタルがバタバタして怖がって3枚で回してしまって、上手くいかず何度もミスが起こって決定的なピンチを招いた」(内野智章監督)とビルドアップが上手くいかず苦戦。怪我をした3番DF田上涼太に代わりクーリングブレイクで5番DF西川楓人を投入するも流れは変わらず、右サイドをモンテディオ山形内定の7番FW荒川永遠が縦に突破し作った前半唯一のチャンスも中で打ち切れず。

 両チームスコアレスで前半を終えるが、後半に入ると試合が動く。52分、東海大仰星はMF岩井がボックス内中央でこぼれ球にダイレクトで合わせ豪快にゴールネットに突き刺した。先制された興國だったが、ハーフタイムにビルドアップを修正したこともありスムーズに攻撃を展開。ここからU-18日本代表に召集され10節の大阪桐蔭戦を欠場した川崎F内定の11番MF永長鷹虎が違いを見せる。

 前半は右サイドに張ってプレーしていた永長だったが、「相手のDFのやり方的に自分が内で仕事をして外を使った方がいいと思った」と後半になると中央に移動。度々ボールサイドに顔を出し攻撃の組み立てにも参加しリズムを作る。すると57分、興國が素早くパスを回し中央を永長が突破したところで倒されてPKを獲得。これを永長が自ら決めて同点に追い付く。興國は更に65分、右サイドを縦に突破しボックス内ニアサイドでボールを受けた永長が華麗にターンをしたところを倒されてまたもPK獲得。このPKを永長が沈めて2-1と逆転に成功する。

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終盤にMF松名大輝のゴールで追いついた東海大仰星

 このまま逃げ切る空気が流れ始めた82分、興國は1番GK岩瀬陽がキャッチした後ボールを離さずオーバータイムで間接FKを取られてしまう。これで絶好のチャンスを得た東海大仰星は3番DF藤嶋凌久がずらしたボールを11番MF松名大輝が右足でシュートを放つと、壁に当たったボールはゴール右隅に吸い込まれる。頼れるキャプテン松名の一振りで東海大仰星が試合を振出しに戻す。興國は85分、右サイドのスローインから抜け出した荒川がダイレクトで右足を振り抜くも、シュートは右ポストに当たって弾かれ勝ち越しならず。試合はそのまま2-2の引き分けとなった。

 前半は東海大仰星がパワフルな攻撃を、後半は興國が丁寧で華麗な攻撃を、前後半でそれぞれ両者がらしさを見せた試合となった。東海大仰星は8節の阪南大高戦から起用され始めた2年生の19番MF玉山樹が違いを見せた。タフなサッカーをするチームの中で「ボールを持って落ち着かせたり、仕掛けていくのが自分の特徴」と小柄なドリブラーがリズムを作った。「インターハイでも全然試合に出れなくて悔しい思いをした」という玉山だが練習でウェイトや走り込みを行いフィジカル面もスケールアップし中務監督の信頼を掴んだ。「阪南大高や興國みたいなチームだと似たタイプの選手が多くて埋もれてしまう」と敢えて東海大仰星を選んだという事もあって異彩を放つ存在になりそうだ。

 一方の興國はやはり11番MF永長鷹虎がこの試合でも存在感を発揮。2つのPK奪取のシーンでも初速の速さやボールタッチの柔らかさで違いを見せた。しかしチームが上手くいかない前半は消えていた時間も多く、「120%やって初めて違いが出るのに、フロンターレから帰ってきてから自分が上手くいかない事が多いのか、自分の為にチームがあると思っている様なプレー。まだまだ幼いですよ」と言う内野監督からハーフタイムに喝を入れられた永長。その内野監督の喝が後半の奮起に繋がったようにメンタル面でまだ課題があるようだ。

 そしてもう一人。興國の攻守の要となりつつあるのが2年生4番MF宇田光史朗だ。内野監督が「別格で歴代最強の安定感」と絶賛する宇田がどんなにプレッシャーを受けても飄々とプレー。そして運動量も豊富で献身的な守備も光っていた。2年生にして既に横浜Fマリノスのエリートリーグに毎回呼ばれる逸材がこれからの興國のキーマンになる事は間違いないだろう。

 

(文・写真=会田健司)

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