松本国際イレブン(写真提供=オフィシャルサポート)

 ただ、この日の主役はやはり西野と木原の2トップだろう。共に2ゴールを決めて、ダブルエースの名にふさわしいパフォーマンスでチームを勝利に導いた。西野は昨年、2年生ながら10番を背負って選手権に挑むもノーゴールで初戦敗退。その悔しさを、チームの勝利と自身のゴールで晴らしてみせた。「抜け出してのシュートは自分の武器なので、その形で得点できたのは自信になります。ミドルシュートも、この1ヶ月、練習してきました。そこを決めれたのもよかった」と振り返る。また木原とのコンビについては「2人で上手く連携できました。(木原)励が落ち気味にポジションをとれば、僕は裏へ抜けるとか、コミュニケーションをとりながらやれました。ボールを持ったとき、励がどこにいるかはだいたいわかるんです」と話している。

 2回戦の相手は優勝候補の昌平。米澤監督は「正直に言えば、やりたかった。夏に対戦した時、すってんてんに行かれている。差がかなりあった。そこで自分たちの立ち位置がわかりました。それがどれだけ縮められたのか。どう勝負できるのか。楽しみなゲームになる」と意欲を燃やす。西野も「試合前に(昌平の)須藤選手がこっちに来て『勝って、やろうぜ(対戦しようぜ)』と言ってくれた。同じ世代のライバルでもあるので、自分が結果を出して勝ちたい」と意気込む。

 気になるのは両チームの勝ち上がり方の違いだ。主将の中野が話すように「僕たちは快勝して、昌平は接戦。メンタル的に、僕たちの方が緩みがちだと思う」という側面はあるだろう。「6得点は気にせず、昌平戦に挑みたい。夏はボールを回されてチンチンにやられた。僕たちが主導権を握れないかもしれないけれど、しっかり耐えて、速い攻撃でしとめたいです」と話すキャプテンの気持ちをチームとして共有して、強敵に挑む。

 一方、敗れた松本国際の勝沢勝監督は「負けるなら大敗、勝つなら1点差かPK戦という想定でした。相手の攻撃陣のレベルの高さ、個の能力の違いを見せつけられました」とゲームプランを明かした。相手の高い攻撃力をどう抑えるか取り組んできたが、後半は点を取りにいった背後を何度も突かれて、失点を重ねてしまった。攻撃で相手の圧力をかわしてボールを前へ運ぶことができず、奪われたときの守備対応でも後手を踏んでしまった。ただ、やれることはやったという思いがあるのだろうか。「京都橘が相手なのがうれしかった。優勝候補とやることを想定して取り組んだことで、選手がすごく伸びだ。いい相手とやれたことを嬉しく思います。本当はもう少し慌てさせたかったけどね」(勝沢監督)と指揮官は選手の成長に言葉をあてた。

 主将のDF柳平強(3年)も「全国のレベルの高さを感じた。これまでの相手とは違いました。足元の技術やフィジカルの強さが、自分たちとは格が違った。対策はしてきたけれど、その上をいかれました」と率直な感想を述べている。柳平は点を取りに行くために攻撃陣との交代で後半途中でピッチを去ったが、その後もベンチから必死に仲間たちを励まし続けている。「ここ最近はこんなに失点することはなかったので、ピッチの中で戦う選手たち、特にDFラインは心が折れてしまうかもしれない。「最後までやり切れ!」と声をかけました」と最後まで仲間と共に戦い続けた。

 大会屈指の2トップを止めることができなかったが、DF青柳凱人とDF渡部翔の2年生CBコンビや、先発に抜擢されたFW高城泰史(1年)などにとっては貴重な経験となったはずだ。これを生かせるかどうかは、彼ら次第。柳平は「2年生は去年も全国を経験している。後輩たちにいい刺激を与えてほしい。全国でやれるチームになれると思う」と後輩たちへエールを送った。

(文=雨堤俊祐)

▽第99回全国高校サッカー選手権
第99回全国高校サッカー選手権