快くインタビューに応じてくれた池谷監督(写真=多田哲平)

――その手応えを感じたのはいつ頃でしょうか。

 私が30歳になる少し前くらいですかね。私は初めからサッカー部を「学校を変える集団」にしたいと考えていました。学校を変えるためには、いち部活を変えるのが大事だと思ったんです。いち部活を変えるには、まず部員1人の意識を変えること。その高い意識を持った1人が別の1人に影響を与えて連れてくれば、優秀な部員が2人になるし、その2人が1人ずつを連れてくれば4人になる。そういう「倍・倍の法則」で、2年目くらいに部員が100人になりました。中1から高2まで各学年に20人くらいですね。それが130人、150人……と年々増えていき、今では各学年に40人ほどの計200人です。その200人がサッカー部以外の生徒1人ずつに影響を与えれば400人。つまり学校を変えるには、部活を変えるのが手っ取り早いんです。

――今では、サッカー部が学校を引っ張る存在に。

 「リーダーとはなんぞや」ということは昔から言い続けています。開成は学校行事にもすごく力を注ぎますから、体育祭の団長や文化祭の裏方も積極的にやらせてきました。広い視野を持ち、上手くネゴシエイト(交渉)できる人間になるには必要なことです。次第に何事にも全力で取り組み、学校を変えるエネルギーを持った子が増えてきて、そのあたりから勉強とスポーツの両輪が回ってきたと実感しましたね。

 また現在、校内では「ティーチングアシスタント」という制度があり、先輩が先生となって学習をサポートするシステムを取り入れていますが、そこに採用されるのもサッカー部の子が多いんですよ。面倒見がいいので。

#2へ続く

(文・写真=多田哲平)