生徒とのコミュニケーションを大事にする池谷勝之監督(写真=多田哲平)
勉強とサッカーの両立をテーマにしたインタビュー特集「文蹴両道」がスタート。
記念すべき第1弾で訪ねたのは、全国ナンバーワンの進学校、開成だ。東大合格者数は1982年から41年連続全国1位という輝かしい進学実績を誇る、中高一貫の超名門。そのサッカー部は、いかにして勉学と部活動を両立しているのか。
秘密を探るべく、顧問を務める池谷勝之監督に話を訊いた。全4回に分けたインタビューの第2回では、指導者としての姿勢、信条やこだわりを話す。
――組織を変えるのには苦労したのではないですか?
そうですね、勉強と部活のバランスには調整が必要でした。就任4年目くらいまでは放課後の週3回の練習に加えて朝練を週5日入れていたんです。昔の子はそのくらいやらせても全然平気でしたが、保護者の方から「いつ勉強させるんだ」と指摘されることも少なくなかった。そこで朝練は減らして、まずは勉強をさせようと。
――今はどう取り組んでいますか。
週3回のトレーニングに加えて、中高ともに週に1回の朝練を入れています。7時スタートなので、なかには4時くらいに起きなければいけない子もいますが、それはセルフコントロールのためにも必要だと思い続けています。週1回だけだから顔を出そうと。朝練を取り入れれば、こちらとしてもコンディションを見ることができる。もちろん父母会にはその意図を説明して、「もちろん勉強もさせます」ということで。それから保護者の方からの不満も減りましたね。
――ご自身も日々試行錯誤を繰り返して今の形にしてきたわけですね。
生徒たちに言う以上は、教員も学び続けなければいけません。生徒たちは見透かすのが早いですから。特に私は学生時代に部活ばかりやっていた人間なので、彼ら以上に学ばないといけない。就任当初はサッカーについて知らなかったので、指導者講習会に精力的に足を運びました。そこでトレーニングの方法論や指導テクニックを学び、今でいうC級ライセンスを取り、それから級を徐々に上げていった。GKの講習会にも出てそのライセンスも取得しました。2年目くらいまでは、スキーの指導経験を積むために週4日くらい雪山にこもりながら、そんなことを続けていました。