生徒にも積極的に対話を促す(写真=多田哲平)
――行動で示してこそ説得力が生まれますね。
初めは「なんだよ。先生サッカー知らないじゃん」と言う生徒がいたのも事実です。開成の子たちは論理的なので、ただ「走れ」と言っても、「なんで走る必要があるんですか」と反論してくるんです。そこに負けないように「こういう理由だからやるべきでしょ」と。生徒を納得させられるだけの指導体系を作っていかないといけないし、いつも新しい情報を入れて、それを生徒に還元しないといけないんです。指導者が学ぶ姿勢を忘れて錆びてしまったら終わりですから。
――生徒が不満を持たないような環境を目指してきたと。
ええ。それに加えて、生徒が安全で満足できる環境を作って、勉強と部活に集中させるために必要なのが、いわゆるクラブマネジメントです。1人で100人以上を一度に見るのは難しいので、コーチやトレーナー、外部コーチを雇わなければいけません。では、その財源をどうするかとか、そういったこともSMC(スポーツマネージャーズカレッジ)に行って学びましたね。
――では、そんな池谷監督が掲げるサッカー部の信条は?
規律をしっかり守ること。当たり前のことを当たり前にやること。そこはこだわっています。社会に出ても規律はあるし、人間は完璧じゃないから遅刻や欠席はあるもの。その時に自分で連絡するのは当たり前。ひとりが規律を破ってしまえば、そこに綻びが生まれてしまう。サッカーも同じですから、そこは口うるさく言っています。
――それを生徒にどう伝えていますか?
今は便利な世の中でLINEとかメールで済ませられるけど、できるだけ面と向かって話してコミュニケーションを取ろうと言っています。当然やむを得ない場面はありますが、休む時は直接事情を説明しに来いと。文字だと情報が限られますし、怪我をした時などはこちらから「どこがどのくらい悪いんだ、原因はなんだ」と追いかけなければ、詳細を得られない。でも電話や直接会って話せば、スムーズに意思伝達ができますよね。
あとは24時間をどうデザインするかは強調しています。スケジュールを1か月単位で大体3か月前で組んでいますが、早めに日程を組む理由は試合に照準を合わせて1日をデザインしていくためです。私が一番叱るのは、前の日に「明日参加できない」と申し出てくること。先に予定が決まっているのだから、そこに向かって準備をしていくのが組織の中に入っている務め。試合の日に塾や模試などの予定があれば、それは事前に分かっているんだから、早めに言って来いと。そうすれば他の選手を使おうと、こちらも準備ができるし、チャンスを得た他の選手も違うアプローチができる。しかし前日に伝えられても対応がどうしても遅れてしまう。だからコミュニケーションは密に取っていますね。私と生徒の間でもそうだし、生徒間でも、それは非常に重要だと考えています。