開成の選手たち。選手権予選では2次予選進出にあと一歩まで迫った(写真=風間久志)
――コミュニケーションについては、練習でも大切にしていますよね。「自分たちで話して考えろ」とメニューの合間に対話の時間を作っていましたね。
それは講習会で習ったテクニックでもあります。生徒たちは賢いから自分なりの考えがあります。でも、それを伝えなければ意味がない。お互いの意見を衝突させることで、重なる部分や相違点が見えてくる。そして最終的なゴールを共有できるわけです。試合で勝つために自分がどう考えているのか、その考えをどういったアレンジで実践していくのか。もちろん何か意見があるなら、先生にも言ってこいと。先日の選手権予選でも負けて課題が出ました。じゃあ次の新人戦までにどういった準備をするべきなのか。練習試合にしても、蹴ってくる相手とつなぐ相手のどちらがいいのか、グラウンドは土か人工芝か。そういうアレンジ。それを生徒同士で分析させています。
――選手権予選の城北戦では試合前に生徒たちが主導で戦略を考えていたのが印象的でした。しかもかなり具体的で。
彼らの分析能力はすごく高いですよ。昔は手書きでトレースして、シュートが何本かとグラフにしていた選手もいました。ゲームをコントロールする選手、途中で入る選手、ゲームを決める選手。そういう役割を明確にすることも考えさせます。
もちろん、まだまだ経験不足で難しい部分もあるから、こちらからヒントを与える時もあります。”エサをまく”というか。ポジショニングやPKでも私が「こっちに来るぞ」と言うと、「なんで先生は分かるんですか」と生徒たちは不思議な顔をするんです。でも、それは私に経験があるから分かることですから、彼らの経験で見えない部分は伝えてあげるようにしています。例えば「一番危険なのはここだぞ。じゃあどう抑える?」と。1人で十分なのか、2人いないと抑えられないのかと。そこで「複数人でこう抑えれば次にアクションを起こしやすいな」と、彼らは結論に辿り着くんです。
――考えて答えを見つけさせる。これは様々なことに通じますね。
そうですね。扉を開けてみないと、その先は見えません。その扉を開けるためにどういう努力が必要か。言い方を変えれば、頂の先は登ってみないと分からない。辛いと思って途中で戻ってきてしまったらその先の景色は見えません。都大会も行ってみないとその先のレベルは分からないわけじゃないですか。それを知りたいなら、そのために頑張るんだと。私は自分が部活をやってきて、全国大会や県大会がどういうものかを知っている。でも生徒たちはそのレベルや雰囲気を知らないんです。ただ彼らには、扉を開くために何が必要か答えを出して、そこに向かって努力する才能はある。そして強い相手にも気後れしないメンタルもある。怖さがあまりないというか。試合をしてみて『相手上手いな』とは言うけど、名前負けはしないし、良い意味でプライドが高い。そういう才能を使わない手はありません。
#3へ続く
(文・写真=多田哲平)