生徒の能力を最大限引き出すチーム作りを目指す(写真=多田哲平)

――そうした日々の積み重ねでしか、チームは成長しませんからね。では最後に今後の武蔵サッカー部のビジョンを教えてください。

 どんな時でも生徒が100パーセントを出し、組織としても最大値を発揮できる、そんなチームにしたいですね。

 武蔵はスポーツ推薦がある学校ではありません。年によって実力にバラつきはありますし、成績が良い時は、たまたまフィジカル的に優れているか技術的に上手い選手がいるからかもしれない。でも、それに左右されないチーム作りをしていきたいなと。

 サッカーはレベルが上がれば上がるほど、強烈な個がいるじゃないですか。そういうチームにどう勝つか。まずは当たり前のことをしっかりやる、その集中力と堅実さは教えられます。それこそ武蔵の文化というと言い過ぎかもしれませんけど、それはこの学校の強みだと思うんですよ。それを活かしたい。

 その基盤を作れたら、次の課題は攻撃。攻撃はどうしても個の裁量が大きいので、すべて教えらえるものではないですが、強烈な個がいないからと言って諦めたくはない。その時にいる選手のフルパワーを引き出して、点を取れるチームにしたい。「武蔵の攻撃って凄いね。どうやって点を取っているの」と言われるようになれたらいいなと。もちろんそれは簡単ではないし、そんな魔法みたいなものはないですけど、何かその仕組みのようなものを見つけられたらいいですね。

 大西先生の言葉で、印象に残っているものがあります。「良い選手が入ってきたからと言って、その年だけ力を入れても絶対に上手くいかない。誰がいても、いなくても常に同じようにやる、その地道な積み重ねが大事。それがあるから、いざ選手が揃った時に勝負ができる」という教えです。

 優れた選手が1人いても、サッカーはチームスポーツだから周りの選手がついていけなければ、上手くは回らない。毎年の積み重ねがあるからこそ、全員が高いレベルでやれるし、個を活かせる。逆にそういうチームは1人の個がいなくなってもレベルが落ちない。それこそ、常に最大値を出せるチーム。武蔵をそういう集団にしたいなと思います。

(文・写真=多田哲平)