「文武両道」「自由闊達」「自主自立」という指導方針を掲げる(写真=多田哲平)

――大野先生が考える「自主自立」とは?

 自分と向き合い、やるべきことを自分で考えて、それを実行できることですね。例えば、ウォーミングアップの前に喋りながらストレッチをしている子がいる一方で、集中して黙々とストレッチをしている子もいる。後者の子は自分と向き合えていますよね。

――では「自由闊達」についてはどう考えていますか?

 広い心で、伸び伸びと振る舞うことですが、そこに関しては難しさを抱いています。今は学校全体の偏差値がどんどん伸びている一方で、生徒は課題に追われて忙しそうにしています。でも勉強が大変だからこそ部活動をもっと自由に楽しくやってほしい。「自由闊達」はサッカー部だけでなくて学校全体で大事にしていきたい校風だと感じています。

 特に今の代は、コロナのせいで声を出すことを制限されていましたから、みんなで一斉に盛り上がる経験をあまりしていません。周りの人からは市高の生徒は優秀だと言われますし、確かに賢くて良い子たちですけど、もっとやんちゃになって感情を出す時があってもいいなと個人的には思うんですよね。

――大野先生は、生徒に伸び伸び部活動をしてもらうためにどんな工夫をしていますか?

 サッカーの中身に関して、楽しさを追求することですね。ただ勝つだけでは嫌だし、言われたことをやるだけのサッカーもつまらないじゃないですか。やっている人も見ている人もワクワクするようなサッカーをしたいです。私が高校時代からそういう考えでしたから。高校でサッカーを終わりにしてほしくなくて、大学に行ってもレベルを問わず関わってほしい。内容にこだわることで、サッカーをもっと好きになってもらいたいなと、その想いは常に持っていますね。

――勝利を取るか内容を取るかは高校サッカーにおいては永遠のテーマですね。

 両取りしたいです。『内容にこだわってばかりいるから勝てないんだろ』と言う人はいるかもしれないけど、マンチェスター・シティとかアーセナル、ブライトンは魅力的なサッカーをやって勝っていますよね。高校生がそれを目指してもいいと思うんです。プロになれるのはひと握りだし、大学に行って続ける子も今は多くないけど、楽しさを追求しながら勝てるようになれば色々なものが変わる気がしています。

――生徒たちは3年生の冬(選手権)まで残りますか?

毎年、ほぼ全員が選手権までやり抜きます。

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