インタビューに応えてくれた後藤功部長(写真=多田哲平)

――留年しそうな生徒に対しては、どういったサポートをしていますか。

 状況を明確に伝えてあげること。それに尽きますね。重い言葉にはなりますが、仮に留年してしまったらこういう結果が待っていると、率直に教えてあげるのが一番だと思います。

 部活としては選手登録もできなくなってしまいますし、選手としても不利益が大きいのは間違いありません。「今こういう状況だから、こう対処したほうがいいのではないか」と伝えてあげて、あとどうするかは自分次第。場合によっては「残念だけど部活動ができる状況ではないから勉強に専念して」というケースも当然出てきますが、そこをハッキリさせてあげることしかないのではないかと。

――厳しい言い方をすれば、現実を突きつけると。

 そうですね。生徒からすれば、サッカーが好きで部活に来ていますし、グラウンドに出れば仲間がいるので、「練習に出たい」と言います。でも「今はできる状況ではないよね。仮にこのまま部活ばかりやっていたら、途轍もない不利益を被る可能性があるよ」とリスクを正直に伝えてあげることですね。

――慶應義塾高校に通う生徒は、厳しい受験を通過しているだけあって、もともと能力は高いですから、現状を知れば危機感を抱いて自然とやるのでしょうね。

 現状とリスクを明確に伝えて、少しの制限をかけてあげれば、彼らは自分で動きますね。

――自主的であるという特徴は、サッカーを観ても感じますか。

 もちろんあると思います。ただ、そもそもサッカーはベンチから細かくサインが出るスポーツではないので、うちだけではなく、どの高校さんも同じではないでしょうか。いざピッチに立ったら自分たちで乗り切る、そういう感覚がサッカーにおいては大事ですよね。

 大人扱いする学校の特徴が出ているのは、むしろオフの日かもしれません。しっかり休むだけでなく、体がなまり切らないようグラウンドに出てきて自主練をする子もいます。うちだけではないはずですが、そういった自己管理ができる生徒が多いのは塾高の良さだと思います。

――後藤先生は、自己管理の大切さをどう感じていらっしゃいますか?

 それがすべてと言っていいでしょうね。この暑熱下で毎日トレーニングするのはかなりハードなので「痩せないようにしっかり食べよう。疲れを残さないように十分に寝よう」と話をしたり、理想の生活リズムが身につくよう、合宿では夜22時に就寝、5時50分に起床を徹底させたり、こちらから訴えかけることもありますが、それを自分で考えている子が多いですし、ちゃんと伝えれば「そういうことか」と理解してくれる子がかなり多い実感があります。

#2に続く

(文・写真=多田哲平)