――自分で考え、自らの責任で物事を判断し行動する。『独立自尊』という慶應義塾の根本精神ですね。

 そうですね。プレーヤーとして自分で考えて日々成長していかないといけません。うちに入部してくる選手というのは、中学生の時に高いレベルのチームでやっていた生徒は極めて少ない。それだけに入学してから目いっぱい頑張り、いかにして上手な選手に追い付き、追い越すかということをいつも考えながら練習してほしいものです。

――先生が部長になられてからのこの10年で、生徒の気質はどんなところに変化が見られますか?

 以前はどの選手もレギュラーになって活躍することを目指していました。そんな熱い生徒が多かったと感じます。「なぜ自分はポジションをつかめないのか」って本気で悔しがり、「これだけ頑張っているのにどうして」という思いから、ふてくされる生徒もいましたね。だから当時の選手たちには『もっとこうした方がいいんじゃないかな』とか『こんなふうにできればレギュラーを取れるかもしれないね』といったアドバイスをよくしたものです。今の子どもは、自分たちからあまり発言してきません。言われるのを待っているんです。指示されるのを待っている割合は、10年前に比べると高いですね。昔はチームを強くしようと仲間同士でやり合うこともありましたが、今はそういう競争意欲が希薄になったように感じます。当時は部員数が今より多かったことも、要因のひとつかもしれませんが。

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