勝負にこだわりながらもチームを成長に導く(写真=多田哲平)
――以前お話を伺った時には「武蔵の生徒たちはやり切れる」とおっしゃっていました。その精神を育むコツがあるのでしょうか。
私が偉そうに喋れることではなくて、それこそ大西先生が築いてきたものに乗っかっているだけです。私から何か働きかけているわけではなく、3年生が選手権まで残ってやるという流れが大西先生の時からできていて、それが伝統的に、当たり前に続いているだけなんです。
そこは本当に大西先生に感謝していますし、私自身はそれを途切れさせないようにしている感じですね。やはり一度途切れさせてしまうと、元に戻すのは難しいということも聞きますし。生徒たちは先輩の姿を見て自然とそうなっています。仮に最後の選手権まで残った先輩がみな受験で失敗したら後輩は続かなくなってしまうと思います。ですから先輩は、後輩のためにも結果を出そうと、そういう姿勢を示してくれています。
――無理やりやらせるものではないと。
そうですね。もちろん途中で辞めてしまう子も中にはいますよ。部活のせいにするのは簡単だし、「部活がしんどい」って言い訳にしやすいと思うんです。部活をしていると、どうしても時間は限られてくるし、体力的にも疲れてしまうから。それを言い訳にされれば、こちらとしても「続けなさい」とは言いづらい。その子の人生が懸かっていますしね。「先輩たちは最後まで部活をやり続けても東大に行っているよ」と言っても、「僕とは違うので」と響かない子もいます。
でも実際に、途中で部活を辞めてしまった子が志望校に行けなくて、高3の選手権まで部活を続けた子が志望校に現役合格するケースは多々あるんです。途中で辞めてしまうと、時間ができたということで、ダラけてしまうんでしょうね。やり切る子は「時間がない」という意識を常に持っているので、切り替えと集中力には凄まじいものがありますね。それはこちらが促すものではないのかもしれません。
第3回へ続く
(文・写真=多田哲平)