大宮・安元利充監督

――安元先生が着任されてからの9年間で、サッカー部から東大生は生まれましたか?

 残念ながら現役で合格した生徒はまだいませんが、浪人して受かった生徒はいますし、千葉大に現役で合格し通いながら勉強して、翌年東大に入った教え子もいます。京大や東工大、医学部は現役で合格していますね。どの生徒も自分で決めたことをやり抜く力がありました。現在の部員の中にも5段階で4.9、学年で2番の生徒がいます。受験すれば東大も行けるんじゃないでしょうか。サッカーをやっているから勉強ができない、というのはどの選手にも当てはまりませんね。

――安元先生が浦和市立高校の頃と比較し、今の高校生気質とはどこが決定的に違うと感じますか?

 例えば塾通いをしてテクニックや解法などに頼って答えを出してきた生徒というのは、入学してからそれほど成績が伸びませんよね。本当に理解した上で次に進まないと、なかなか点数は上がらないものです。サッカーも同じではないでしょうか。見よう見まねではいくらやっても駄目です。その本質を見ないと成長するのは不可能だと思います。今はスクールなどレッスン場がたくさんあって手厚く教えてくれますが、やっぱり最終的には自分で考えながらやらないとうまくはなりませんよね。私にしても(高校時代の恩師である)磯貝(純一)先生から、そんなにあれこれ教わったわけではありません。あの場面、どうして1対1で抜かれてしまうんだろうと観察し、「ああ、こういうタイミングで動き出せばいいのか」など、とにかくいろいろなことを考えながら、うまくなろうと取り組んでいた記憶があります。今の子どもは様々なものに頼り、守られていて自立し切れていないのかな、とも思います。そのあたりに世代の違いを感じますね。

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