ーー秋田監督は大学でサッカーをする意義とはどういうことだと思われますか?
大学は高校と違って、全国から人が集まるんですよね。私の場合、高校は水戸商業だったので、基本的には水戸周辺の人しかいないんですけれど、大学は違います。環境や風土が異なる人たちがひとつの場所に集まるんです。最初はお互いが見も知らぬもの同士だったのが、サッカー部に入って4年間同じ釜の飯を食うことで、一生の友になることができるんです。私の恩師の言葉を受け、学生に対して「男の人生は出会いとロマンだ」と言うんですけれど、大学時代って大切な仲間と出会える貴重な期間でもあると思うんです。そういう時期に、チームのために、仲間のために全力でプレーすることの大切さを学んでほしいなと考えています。「心から言い合える、心から助け合える、心から信頼できる」仲間とプレーする。学生時代の良さって「仲間のために体を張って頑張ることができる」ということなんじゃないかなと。そして大学で縁あって出会って夢を語って夢に向かって前進する素晴らしい経験をたくさんしてほしいと思います。
大学卒業後に、プロへと進む選手もいますが、当然すべての選手がプロになれるわけではありませんし、サッカーは大学までで終わりという選手もいます。私は、大学というのは「プロ予備軍」ではなく「人を育てる場所」だと考えていますから、授業もしっかり受けなさいと言いますし、友だちもたくさん作りなさいと言います。「サッカーだけじゃダメだよ」と。広い視野を持っていろいろなことを経験して身に付ける。大学時代って、知らないことを先生や先輩から教えてもらったり、友だちから教えてもらったり、吸収できることが山ほどあると思います。そういういろいろな経験ができる環境が「大学」なんじゃないかなと思います。そして大好きなサッカーを一生懸命頑張って欲しいです。
ーー新型コロナという大きな困難を経験して、選手たちに変化などありましたでしょうか?
そうですね。表現することが難しいですが、「半歩」前に進むことができたのかなと思います。やはりコロナで寮から2週間外出できずにいたことで選手たちは我慢すること、忍耐力がついたとは思います。コロナに陰性だった選手はとくにそうだと思います。活動自粛後にサッカーをできることのありがたさも学んだと思いますし、友だちやガールフレンド、両親など大切な人と会うことができるよろこびも知ったと思います。サッカーもできず、誰にも会えずという2週間を耐えたことで、「苦難を乗り越えた先には明るい未来が待っている」というか、次に進むことができるというか。困難にぶつかり苦しくて後退することもある中、前を向いて頑張ることで、暗闇に一筋の光が差し込んでくる。一歩ならずとも半歩だけでも前に進むことができたということは、とても大きなことだったのかなと思います。
卒業する4年生で主務をしていた子が「寮を出て行きます」と挨拶に来たんですけど、彼も成長した一人だと思います。彼は「主務のできることとは何か」をつねに考え、「トップチームだけでなくBチームもCチームも同じように支えなければいけない中で、泣きそうなほど辛くて大変なこともあったけれど、多くの人に支えられて自分は成長できました」という話をしてくれました。普通ではない一年間だったからこそ、いろいろなことを学び、濃い信頼関係を築くことができたんじゃないかなと思います。
次回は秋田監督が指導者として大切にしていることや、指導した中で印象に残っている選手についての話などを紹介する。
(取材=高校サッカードットコム編集部)