第37回九州大学サッカーリーグ第1節 対西南学院大学戦スターティングメンバー(写真提供=福岡大学サッカー部)
2009年には総理大臣杯に優勝、インカレ準優勝という輝かしい成績を収めるなど、九州の強豪として名高い福岡大学サッカー部。2018年のインカレでは、その年の総理大臣杯の覇者・明治大学に1-0で勝利、2021年のインカレでは、同じくその年の総理大臣杯の覇者・法政大学を1-0で下すなど、関東大学サッカーリーグ1部の名門にも負けない実力を備えている。チームを率いるのは、ユニバーシアード3連覇、全日本大学選抜の監督など数々の実績を誇る乾真寛監督。今回はそんな乾監督に、選手の育成やスカウティングについてなどの話をうかがった。
ーー福岡大学サッカー部は定期的にセレクションを行っているのでしょうか?
個人的には「セレクション」という言葉や使い方が好きではありません。強豪の大学さんなどには「入りたい」と思う選手がたくさんいると思います。そこで選手を集め数回セレクションを開いて、その場でどうするかを決めることもあるのではないでしょうか。ただウチでは実際に所属チームでの試合を見に行かずに、セレクションの内容だったり、Jのスカウトさんからの情報だけで判断してしまうということはやっておりません。
ーーでは選手をスカウティングする際や育成に関して重視していることはどういったことでしょうか?
九州に位置する以上、関東など東日本の選手を獲りに行くということは基本的にしていません。試合を見に行くのも岡山から西側で、関西から東は試合を見に行って選手を獲りに行くということはしないんです。なので年末年始の高校サッカー選手権大会も見に行きません。その変わりというか中国5県や四国からの新入部員は多いですし、メインは地元である九州全域です。まだ磨ききれていない西日本にいる原石をしっかり見て集め、そして大学の4年間で育てていくというのが我々のスタンスです。18歳の段階ではそれほど騒がれてはいなかった選手たちを、大学の4年間で大きく成長させる。Jリーグに行き、オリンピック、A代表、W杯というところまで選ばれる選手を多く輩出しているというところが、我々最大の特徴であると言えます。
ただ、「Jリーグに何人送り込んだか」が1つの物差しのように思われがちですけれども、福岡大学には「スポーツ科学部」というスポーツの専門学部もあり、教員、指導者の養成にも熱心に取り組んでいます。授業のカリキュラムにもサッカーのコーチングの演習や実習など、「サッカーを授業として学ぶ」という機会もあります。
U-17日本高校サッカー選抜の監督をしている佐賀東の蒲原晶昭監督も福岡大学出身ですし、その佐賀東と県の上位を争う佐賀龍谷の太田恵介監督も福岡大学出身です。100回大会の選手権で4強入りした高川学園の江本孝監督も福岡大学出身です。高校の指導者だけでなく中学年代のクラブチームの指導者になっているものも多くいます。
高校1年の時から追いかけて追いかけて育ってきたところでスカウトする選手もいますし、選手によりさまざまです。高校の監督とも話をして、親御さんが来ていれば親御さんとも話し、本人とも話をして、ポテンシャルや潜在能力をチェックします。
若手育成に定評のあるアヤックスが、選手をスカウトする際に「TIPS」と呼ばれる観点を重視しているのですが、我々はそれをもじった「TOPS」を重視しています。「T」は「TRAINABILITY(=トレーニングによって能力が向上する可能性)」です。我々は18歳の段階で完成形を求めていません。「下手だけど速い」とか「遅いけどデカい」とか「めちゃめちゃ頑張って点を取る」とか、そういう選手が大好きなんです。「O」は「OPEN MIND(=柔軟性)」ですね。日本人の場合、18歳で完成した選手なんてほとんどいません。日本人の骨格や筋肉ってそこ(18歳)から大きくなったり強くなったりしていきますから。「超高校級」と言われながらも伸び悩んだ人たちに共通して多くみられるのは「TRAINABILITY」や「OPEN MIND」が低かった選手たちなんです。意見などを受け入れて自分を変える力が弱い。それから「P」は「PERSONALITY(=個性・性格)」。人間力がないと、というところですね。最後の「S」は「STRONG POINT(=長所・強み)」ですね。「ヘディングが凄い」とか「ドリブルが凄い」とか、なんでもいいんですけれども圧倒的に尖っていることです。